私とは真逆にいるような外見の彼女。 ボディラインがくっきり分かるようなタイトなワンピースに、派手目のお化粧。 肩下まであるウェーブが掛かった髪を、留めたりしないで下ろし髪にしていて、髪色も私みたいに地毛そのものの色ではない、いかにもカラーリングしていますっていう感じの明るめのシルバーアッシュ。 私の地毛は色素が薄くて栗毛色に見えるだけで、別に染めたわけではないけれど、彼女のはわざわざそういう色にしてあるんだろうなぁという印象で。 自分をどう見せたら可愛く見てもらえるか計算づくなんだろうなぁという雰囲気の女性だった。 そして……そんな彼女は見た目同様とても負けん気が強くて激しい印象そのままに、私をやたら敵視しているのが分かる。 そ、そりゃ、私、まだバイト歴1週間にも満たないひよっこです! でも、だからってそんな言い方しなくてもいいじゃない。 そもそも……新人であることを差し引いてもあなたの彼氏?の持ってきたカゴの中身が多かったんだから仕方ないところもあるんですよ? そう言いたいのをグッとこらえて、「申し訳ありません」と謝る私に、長身男が盛大な溜め息をついた。 あー、私、この人からも嫌味言われちゃうんだ。 流れから察して、そう覚悟した。 でも。 「あのさぁ、相川《あいかわ》さん、俺、そういうの好きじゃないって言わなかった?」 意外なことに彼の矛先が向いたのは私ではなく、シルバーアッシュの彼女――相川さん?――の方で。 相川さんが自分に絡めた腕をスッとほどくと、冷ややかに彼女を見つめる。 「俺、たくさんカゴに入れてるじゃん? この子は一生懸命それを処理してくれてるわけ。別に彼女がトロイとかそういうんじゃねぇの、見たら分かんだろ」 言われた相川さんは、真っ赤になって震えていて、 (あー、これ、まずいかも) そう思った時には遅かった。 振り上げられた手が見えて、彼、頬を張られちゃうんだ! そう思って思わずギュッと目をつぶった私は、けれど待てど暮らせど予期したような音はしてこない。 恐る恐る目を開けると、彼に振り上げた手を握られて立ち尽くす彼女の姿があった。 「俺が悪いことした時はいくらでも叩かせてやるよ。けどさ、今回は違うから。――悪いな」
Last Updated : 2025-08-05 Read more