Semua Bab あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を: Bab 41 - Bab 50

77 Bab

段ボール①

翌日、大智は昼飯に素麺をズルズルと思い切り啜《すす》ると、明穂の部屋でドカッと胡座をかいた。長い前髪が目にかかる黒いTシャツにジーンズ姿の大智は、昔付き合ってた頃のやんちゃな笑顔そのままで、明穂の胸が思わずドキッと高鳴った。懐かしい空気が部屋に漂う。「なに、ギャップ萌えだろ」大智がニヤリと笑う。「あー」明穂は目を逸らした。「萌えたな」「否定はしないわ」「あー、おまえのことギュッと抱き締めてぇ」明穂はサッと一歩後ずさった。心臓がバクバクしてるのに、平静を装うのが精一杯だ。「昨夜のあれ、なんなのよ」「親父たちのショックを和らげるためにブチかましたんだよ」「寝込んだらしいじゃない!」「吉高の事知ったら、マジで脳卒中起こすな」「縁起でもないこと言わないで!」大智は新しいSDカードをデジタルカメラにカチッと差し込み、長い前髪をクシャッと掻き上げた。ちょっと真剣な目つきに変わる。「明穂」「なに」「その女に見覚えはないのか」「分からない」「だよなぁ」明穂はハッと気づいた。大事なことを言い忘れてた。「あっ!」「なんだよ、変な声出すなよ!」「紗央里さんに会ったことある!」「はぁ?見覚えねぇって言ったじゃねぇか!」「紗央里さんかどうかは分からないけど、ウチに来た女の人がいたの!」「なんだよそれ」「荷物持ってきたのよ」「荷物ぅ?」「お腹が切られたぬいぐるみが入ってた」「バ、バカじゃねぇのか!そんな大事なこと早く言えよ!」大智の目が一気に鋭くなった。明穂の言葉に動揺しながら、寝込んでいる父親の部屋に突進し、車の鍵をガサッと奪い取った。「行くぞ!」と叫び、明穂を後部座席に押し込むように乗せた。車が急発進する瞬間、明穂は窓の外を見つめながら、胸騒ぎが止まらないのを感じた。「大智、免許証持ってたんだ?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-13
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段ボール②

(泣いたら負け)明穂は目尻をグッと拭うと、リビングのチェストから障害者手帳、保険証書、実印、銀行通帳をガサガサと鞄に詰め込んだ。部屋を見回すと、結婚式で微笑む二人のフォトフレームが目に飛び込む。胸がズキンと痛んだ。明穂は無言で立ち上がり、震える手でそれを掴むと、大きく振りかぶって床に叩きつけた。(・・・・・・!)バキッとガラスが割れる音が響き明穂の頬に血の筋がついた。大智が2階からドタドタと駆け下りてきた。ガラスの破片の中で無表情に佇む明穂を見て、目を見開く。「おいっ!おまえ何してんだよ!」「幸せになれると思ったの・・・・・・」「動くな!」「幸せだと思ってたのに・・・・・」「動くなって!」パリパリとガラスを踏んだ明穂の足裏から血が滲む。大智は慌てて靴を履き、明穂に駆け寄るとその華奢な身体をグイッと抱き上げた。「幸せだと思ってたの・・・・・」大智は明穂を抱えたままソファにドサッと腰を下ろした。明穂は大智の胸にしがみつき、抑えきれず嗚咽を漏らした。大智の指先は一瞬戸惑ったが、すぐに明穂の背中に回り、力強く抱き締めた。「これから俺が幸せにしてやるから」「・・・・・」「泣くな、あんな奴のために泣くな」「うん」「泣いたら負けだ、泣くな」静かな部屋に、明穂の慟哭が響いた。「・・・・よし、これで全部積み終えたな」「ありがとう」「冬物の服、いいのか?」「また買い直す」「お、俺が買ってやるよ」「え、悪いよ」「何だよ、そんときゃ俺ら夫婦だろ!」大智の声に力がこもる。目を腫らした明穂は、力無く微笑んだ。心が少し軽くなった気がした。「ところで、これどうすんだ? いきなり全部持ってったら、おまえのとーちゃんマジで寝込んじまうぞ」「大丈夫、夕方お母さんと買い物行くみたいだから」「じゃ、その間に部屋に運ぶか」「うん」そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-14
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女の影

翌日、大智は髪をクシャッと後ろに撫で付け、ピシッと背広を羽織ると、弁護士バッジをキラリと光らせながら革靴をカツカツ鳴らして出掛けた。その背中はたくましく、5年前のやんちゃな大智とは別人のよう。明穂は胸の奥で何か温かいものが広がるのを感じた。「行ってらっしゃい」「おう、行ってくるわ!」「なによ」「いや、良いな、これ」「何がよ」「新婚夫婦みたいじゃん」大智がニヤリ。「しーっ!お母さんたちに聞かれたらどうすんの!」「どうもしねぇよ」「もうっ!」明穂の頬がポッと赤くなる。微笑ましいひととき。まるで時間が少しだけ優しくなったみたいだった。大智を笑顔で見送った明穂は、デジタルカメラを首から下げ、白杖《はくじょう》を手に持つと、玄関の扉をカチャリと閉めた。白杖で足元の点字ブロックをトントンと辿り、横断歩道を渡る。信号のピピピという音に合わせ、いつもの散歩道をゆっくり歩いた。自宅からほど近い児童公園に着くと、子どものキャッキャッという笑い声や滑り台を滑るズザーッという音が響いてきた。(あ、ウグイス)明穂はそっと耳を澄ませ、木々の間から聞こえる鳥のさえずりにカメラを向けた。カシャッとシャッターを切ると、ブランコのキーキーという揺れる音にもレンズを傾ける。風が頬を撫で、朝の清々しい空気が鼻をくすぐった。(今日は鳩がいないのね)いつもなら、樹の下の木製ベンチの周りで鳩がゴロゴロと喉を鳴らしてるのに、今朝はその気配がない。少し寂しい気がしたけど、明穂はベンチに腰を下ろし、風の音や遠くの子供たちの声を聞きながら、そっと目を閉じた。心に浮かぶのは、大智の力強い背中と、さっきの「新婚夫婦」って言葉。唇に小さな笑みが広がった。明穂は鳩のいない静けさに不思議を感じ、デジタルカメラのシャッターをカシャカシャと切っていた。すると、背後からジャリッと砂利を踏む音が近づき、反射的に振り返った瞬間、誰かの手が肩にガツンとぶつかった。カシャデジタルカメラのシャッターの切れる音。一瞬、視界がぐ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-15
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女の影②

明穂が病院のベッドで目を覚ました頃、吉高は紗央里の両膝裏をグイッと抱え上げ、汗と欲にまみれて激しく腰を動かしていた。薄暗い寝室は、閉め切ったカーテン越しに漏れる薄光と、むせ返るような熱気で満たされていた。喘ぎ声が響き合い、汗と吐息が絡み合う。「うっ、うっ」吉高は妻・明穂が寝ていたベッドで愛人を抱く背徳感に酔いしれていた。そのシーツには、明穂の匂いがまだほのかに残り、吉高の胸に罪悪感と快楽が同時に突き刺さる。紗央里は、明穂の不在を埋めるようにそのシーツの上で身をよじらせ、貪られる情事にゾクゾクする快感に溺れていた。彼女の爪が吉高の背中に食い込み、鋭い痛みが彼をさらに煽る。「ああ、あ!せんせ!先生!」紗央里の声は、甘く切なげに響き、吉高の理性を溶かした。「紗央里!」彼は彼女の名を呼び、まるで自分を縛る全てから逃れるように腰を打ちつけた。「もっと、もっと、ちょうだい!」最初は隣近所を気にして声を抑えていた二人だが、熱に浮かされるとタガが外れ、喘ぎ声は開け放った窓の外まで響き渡った。「ああ!すごい!」「うっ、紗央里、うっ!」「ああっ!」カーテンが揺れ、ベッドの軋む音が部屋にこだまする。古い木製のベッドフレームは、まるで二人の情熱に耐えかねるように悲鳴を上げた。窓の外では、夏の夜の虫の声がかすかに聞こえるが、それすらかき消すほどの激しい音。近隣住民は、若い女が吉高の家に出入りする姿を何度も目撃していた。紗央里の派手な赤いワンピースや、夜遅くに響く彼女の笑い声は、近所の主婦たちの噂の種だった。隣家の佐藤さんは、その淫靡な騒音に眉をひそめ、子供に聞こえないよう窓を閉める日々が続いていた。ある晩など、子供が「ママ、隣で誰か叫んでる」と無垢に尋ね、佐藤さんは顔を赤らめながら「テレビの音よ」と誤魔化した。だが、愛欲に溺れた吉高はそんな噂にも気づかず、平然と回覧板を隣人に渡し、世間話までしていた。「最近、暑いですね」と笑顔で話す彼の背後で、紗央里の香水の匂いが漂うこともあった。吉高の心は、明穂の病室と紗央里の柔肌の間で引き裂かれていたが、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-16
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明穂の家

明穂の家にタクシーで乗り付けた大智は、隣家のインターフォンを押した。「ごめん下さい」と低く呼びかける。「はーい」と、甲高い声が返ってくる。「弁護士の仙石です」と名乗ると、「はいはい、ちょっと待って!」と慌てた口調で年配女性が玄関に現れた。手に持っていたのは、明穂のデジタルカメラだ。「もう、使い方難しくてさ」女性が笑いながら言う。「ありがとうございます!」大智は深く頭を下げ、カメラを受け取った。数日前、大智は近隣を回り、吉高の家に若い女が出入りするのを確認していた。新興住宅地ゆえ、昼間は若い世代が留守で手がかりが掴めず、ゴミステーションで頭を抱えていると、隣に年配女性が住むと聞きつけた。「すみません」「どちら様?」警戒する女性に、大智は金の弁護士バッジをキラリと光らせ、佐倉法律事務所の名刺と菓子折りを渡した。「どうぞ、お茶でも」女性はニコニコ家に招き入れた。「もう、あの家の声がうるさくて・・・・・」「心中お察しします」大智は相槌を打ち、明穂のカメラを手渡して吉高の家の出入りを撮って欲しいと依頼した。すると、紗央里が鍵を開け、吉高が笑顔で迎える場面がバッチリSDカードに収まっていた。「ここ回したら赤いランプ点いて、写真撮れなかったの」女性が申し訳なさそうに言う。「いや、最高です!」「え、良かったの?」「はい!」大智は笑顔で応じた。画像に加え、紗央里と吉高がBMWでキスする動画まで入手することが出来た。切り札が揃う喜びにニヤリとしたが、実兄の愚かさに腹が立ち、情けなさがこみ上げた。(父ちゃんと母ちゃんに何て言うんだ・・・・・)大智は明穂の家の鍵をガチャリと開けた。玄関ポーチは陰鬱な空気に淀む。洗濯機脇のカゴには生乾きのバスタオルが山積みで、シンクにはインスタント麺がこびりついた鍋が放置されていた。リビングに足を踏み入れると、飲みかけのビールや缶チューハイが散乱し、小蝿がブンブン飛び回る。(最悪だな)
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-17
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明穂の家②

大智は胸が締め付けられる思いで、椅子に座った。パソコンを開き、証拠を一つずつチェックする。「BMWの動画、隣家の写真、おまえの寝室での録音、そしてこの家のメモ。吉高と紗央里の関係は、否定しようがない」明穂は黙って頷き、目を伏せる。「大智、ありがとう。でも、こんなことまでさせて、ごめんね」彼女は囁いた。大智は首を振る。「明穂が笑えるようになるなら、俺は何でもするよ」その言葉に、明穂の目が潤んだ。母親が咳払いし、話を進める。「次は紗央里の動き。彼女の妊娠は嘘の可能性が高い。病院のカルテを調べるのは難しいけど、彼女のSNSや行動パターンから、別の男とも関係を持ってる可能性がある」「そんな・・・・吉高さんの他にも?」「SNSに匂わせ画像がアップされていた」そこには、明らかに吉高とは異なる時計を着けた男性の腕が写っていた。大智は紗央里の動向を追うためナースステーションに向かった。吉高に瓜二つの大智は最も簡単に彼女のシフトを調べ、カフェテリアで待機した。紗央里は昼休みに現れ、別の医師と親しげに話していた。彼女の笑顔は計算高く、彼の肩に軽く触れる仕草は、吉高に対するものと同じだった。大智はスマホでその様子を撮影し、データに保存した。(こいつ、誰とでも同じ手口か)紗央里のSNSをチェックすると、「新しい未来、始まるかも」との投稿に、その医師のアカウントからの「いいね」が付いていた。(くそっ)大智は眉を寄せ、病院を後にした。その夜、紗央里のマンション近くで張り込みを開始。黒いキャップを被り、車内で待機。22時過ぎ、紗央里がタクシーから降りてきた。隣には昼休みに一緒にいた医師の横顔。エントランスで二人は親密に話し、紗央里がその腕に絡みつく。大智はカメラを構え、シャッターを切った。(汚ねえ女だな)紗央里の裏の顔が、また一つ明らかになった。翌日、明穂に報告すると、彼女は冷静に答えた。「そう、なの」「紗央里の妊娠は嘘。産婦人科の受診歴なし。その医者とも関係を持ってる。これは、吉高を嵌めた可能性が高い」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-18
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吉高の見舞い

明穂はMRIとCTスキャンの検査が続き疲弊していた。病室のベッドで白い天井をぼんやり見つめる。点滴のチューブが腕に食い込み、消毒液の匂いが鼻をつく。視界はぼやけ、目の奥に鈍い痛みが残る。(大智、どうしてるかな)寝返りを打とうとすると、踵を引き摺る聞き慣れた足音が、廊下を歩いて来た。心臓が締め付けられ、こめかみがドクドク脈打つ。病室の扉がガラリと開き、スリッパの音が近付く。カーテンがゆっくり捲られ、人の気配が明穂を覗き込んだ。「明穂、大丈夫か」吉高の声だ。2日間の学会で不在だったから、明穂の救急搬送も入院も知らなかったと言う。いつもの嘘くさい言い訳に、明穂の胸は悲しみでズキズキした。窓に顔を向け、吉高を見ず、唇を噛む。「明穂、実家はどうだった? お義父さんもお義母さんも元気だったか」(そんなこと思ってないくせに)「いつ帰ってくるんだ」(紗央里がいる家に帰れるわけない)「傷、痛むか?」明穂は肩肘を突き、半身を起こして吉高を睨む。薄ら笑いの知らない顔に、胸が冷えた。「何しに来たの」「見舞いだよ」「妻が救急車で運ばれたのに連絡ないの!」吉高の顔はしらけ、罪の意識が微塵も感じられなかった。「携帯の電源切ってた」「医者なのに!」「仕事とプライベートは別だ」「今までそんなことなかった!」吉高が手を伸ばし、肩に触れる。「やめて!」「どうしたんだ」「触らないで!」明穂は枕を握り、投げつけるが、それは吉高を掠めて床に落ちた。「何怒ってんだよ」「何って・・・・・!」大智の「不倫の話はするな、絶対だ」という言葉が頭をよぎり、罵詈雑言をグッと飲み込んだ。そこで母親が病室の扉を開け、白衣の吉高の姿に声を詰まらせた。「あ、あき・・ほ」「お母さん、駄目!」狼狽える母親に、明穂は声を大にする。「あ、そうね、そうだったわね」「お義母さん、お久しぶりです」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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カルテ保管庫

大学病院の廊下は、消毒液の匂いと蛍光灯の無機質な光に支配されていた。大智はサッと動いた。クリーニングワゴンの陰に身を滑らせ、看護師の目を盗んで白衣を一枚拝借する。「あ、ごめん、白衣一枚借りるよ」近くの清掃員に軽く声をかけた。「先生、それクリーニング前ですよ」清掃員の女性が眉をひそめる。「いいのいいの、すぐ脱ぐから」大智は笑い、銀縁眼鏡を胸ポケットに放り込んだ。トイレに駆け込み、鏡の前で髪をラフにクシャッと散らす。指先で前髪を少し乱し、吉高を装うための準備を整えた。ポケットに手を突っ込み、さりげなく案内板をチラ見。通りがかりの看護師が「先生、お疲れ様です」とペコリと会釈してきた。どうやら仙石吉高に見えるらしい。内心でニヤリと笑い、大智はエレベーターに乗り込んだ。5階のボタンを押し、背中でドアにもたれかかる。カチンとドアが開き、右手にナースステーションがあった。看護師の一人が「千石先生、どうしたんですか」と身を乗り出した。大智はカウンターに寄りかかり、わざとらしい笑みを浮かべる。「なあ、紗央里ちゃんいない?」「紗央里・・・・・・・佐藤さんですか?」看護師が確認する。「そう、紗央里と約束してたんだけど、姿が見えなくてさ」大智は大袈裟なゼスチャーで肩をすくめた。看護師たちは怪訝な顔を交換し合う。「佐藤さんなら、この時間はカルテ保管庫で整理してますけど」「あ、そう・・・カルテ保管庫」「先生も行くんですか?」「ちょっと野暮用」大智が背後でひらひら手を振ると、看護師たちの囁きが漏れてきた。「やっぱり佐藤さんと・・・・だよね」「そうそう、いつも一緒に出てくるもん」「絶対おかしいって」吉高の迂闊な振る舞いが、職場でも不倫の噂を広げていた。ラッキーだ。大智は内心で舌を出した。一か八か、カルテ保管庫の鉄の扉に近づく。施錠されてたら計画はパーだ。ところが、ドアノブは軽い音を立てて回った。(開いてるじゃねぇか、どんだけ間抜けなんだよ)急いでたのか、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-20
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カルテ保管庫②

スマートフォンには、隣家の女性から新たなメッセージが届いた。またあの女、吉高さんの家に入ってったよ。写真撮ったから送るね 既読大智は画像を確認。紗央里が吉高の家の鍵を開け、慣れた様子で中に入る姿が映っている。続けて、BMWの後部座席で二人が抱き合う動画も届いた。(懲りねえな)大智は眉を寄せ、島崎にデータを転送した。紗央里の動きは、ますます大胆になっていた。病院内での噂、SNSでの匂わせ投稿、そして今、別の医師との親密な関係。彼女は吉高を操りながら、別の男にも取り入っている。 翌日、大智は再び病院へと向かった。明穂の病室を訪れると、彼女はベッドで本を読んでいた。視力の低下が進む中、大きな文字の本を手に、ゆっくりページをめくる。「大智、来たんだ」明穂が微笑む。その笑顔に、大智の胸は締め付けられた。「調子はどう?」「少し楽になったよ。お母さんが、ずっとそばにいてくれるから」「よかった」大智は椅子に座り、明穂の手を握る。「吉高、昨日来たんだろ?」「うん」「何か言ってた?」「・・・・いつもの、嘘ばっかり」明穂の声は震え、目を伏せた。大智は言葉を選び、続ける。「明穂、全部知ってるんだろ。吉高のことも、紗央里のことも」「・・・・うん」「証拠は揃えた。後はお前の決断だ」明穂はしばらく黙り、涙をこぼした。「大智、ごめん。こんなことに巻き込んで」「謝るな。俺が選んだことだ」明穂は小さく頷き、大智の手を強く握り返した。証拠は完璧だった。BMWの動画、隣家の写真、カルテ保管庫の録音、吉高の家の見守りカメラの映像。全てが吉高と紗央里の関係を裏付ける。島崎にメッセージを送った。裁判なら、慰謝料と財産分与で明穂が有利 既読不倫相手にも慰謝料、請求するんだろ当然だ 既読了解。けど、大智、冷静にな。家族を壊す覚悟はできてるのか?大智は一瞬、戸惑
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-21
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三人の弁護士

「いやぁ、金沢観光、マジで夢だったんだよ!」北陸新幹線のホームを降りた3人の弁護士、瀬尾、辰巳、島崎が、改札で「佐倉法律事務所御一行様」のプラカードを掲げる大智に「よっ、久しぶり!」と手を振る。「この前会ったばっかだろ」「大智いないと事務所寂しいよ」「静かで仕事捗るって言いたいんだろ」「捻くれてんなぁ!」軽快な笑い声が響く。大智は吉高と紗央里の物語を有罪にするため、東京の佐倉法律事務所の仲間を金沢に招いた。3人は最初渋っていたが、明穂の写真を見せた途端、俄然やる気になった。「おお!」「噂の鼓門!」「柱、めっちゃ立派!」鈍い朱色の鼓門は縄文時代を思わせ、梅雨明け間近の青空が映える。「さぁ、持った持った!」「おい、俺荷物係かよ!」3人は大智に旅行鞄を押し付け、鼓門の下でスマホを構え記念撮影。「鼓って芸者の鼓だろ?」「よく知ってるな」「るるぶ買ったんだよ」「どんだけ楽しみにしてんだ!」辰巳がガラス張りの「もてなしドーム」を見上げ、「鳩の糞害が心配だけど、キレイだな。鳩もいねぇ」と腕組みをした。「時々、鷹匠が鷹飛ばすんだよ」「鳩も大変だな」「だろ?」大智がドヤ顔で鼻を鳴らす。「でもさ、あんな可愛い子泣かせるなんて許せねぇ!」「お前、乗り気じゃなかったろ」「案件次第だよ」「なんだそりゃ」「大智、明穂ちゃんのそばについていなくて大丈夫か?」「息抜きだよ、息抜き」「相変わらず適当だな」そこで大智が真顔になった。「実の兄貴を追い込むの、気が重いよ」「だな」3日後の決行に向け、3箇所同時進行で吉高と紗央里を追い詰める計画を立てた。「俺と瀬尾は大学病院のお偉いさん方とご対面」「辰巳は吉高の慰謝料請求の迎えに」「島崎は紗央里の実家に突撃だ」瀬尾が首をかしげる。「な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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