蒼空は冷ややかな視線で彼を見た。「意外だね。櫻木社長って、こんな遊びにも興味あるのね。私は結構です。変な病気かかったら困るので」かなり容赦のない言い方だった。棘のある台詞がそのまま突き刺さる。礼都の顔色が一瞬だけ曇る。しかしそれでも、表向きの紳士的な態度は崩さない。蒼空は踵を返し、プールの扉を押し開けようとした。だがその背後から、礼都ののんびりとした声が追いかける。「無駄だよ。僕の許可なしじゃあの扉は開かない。今夜はおとなしくここにいな」歯を食いしばる。振り返った時には、すでに彼は何のためらいもなくその場でジャケットを脱ぎ、続けて白いシャツまでも脱ぎ落としていた。眉をひそめ、視線を逸らす。礼都が笑う。「どうした?僕の体、気に入らないか?なんでそっぽを向く?」「発情期のクジャクみたいにそこら中で羽広げてなきゃ、もう少し見てあげたかもね」吐き捨てるような声音。礼都はくすりと笑い、それ以上は何も言わなかった。視界の端で、彼は上半身裸のまま人混みの中へと入っていき、「遊びたくなったら来いよ。待ってるから」と手を振っていた。どうやら顔馴染みらしく、すぐに他の男女と酒を酌み交わしながら楽しそうに笑い始める。派手な水着姿の女たちが次々と彼にまとわりつき、艶めいた笑みを浮かべながら白く細い指先で彼の胸や背中を撫で回し、あからさまに誘惑する。礼都はちらりと視線を向けただけで、その手を掴み取り、軽く笑った。「もう満足した?」女は唇を尖らせながら抗議するが、彼は有無を言わせずその手を払いのけた。女は不満げに足を踏み鳴らし、唇を噛みながら去っていく。その様子に周囲の男たちから「ちゃんと優しくしてやれよ」などと軽口が飛ぶが、礼都はただ笑って受け流す。蒼空はほんの数秒だけその光景を見たあと、すぐに視線を外した。確かに、体は良い。でも、問題は中身だ。彼が彼である限り、見る価値はない。踵を返し、閉ざされた扉を真剣に見つめる。そのあまりの集中ぶりに、礼都がこちらを見る目つきまで気づかなかった。まるで毒蛇のような冷たい視線だったのに。ドアノブを掴み、力いっぱい回してみる。やはり、開かない。何度も試してみたが、ダメだと判断して手を離す。暇を持て余した視線の先には、騒
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