ふいに、瑠々の胸の奥に不安が広がり始めた。瑛司が今どう思っているのか、彼の態度が読めない。自分を責めているのか、疑っているのか――わからない。何より衝撃だったのは、彼が昔のように即座に自分の味方には立ってくれなかったことだ。よく考えれば、瑛司は本当に疑っているのかもしれない。蒼空のために――彼女を。瑠々は指先を握りしめた。「わからない。蒼空が勘違いしたんじゃない?あの水じゃなかったのかも」瑛司は目を開け、彼女に視線を向けた。静かで、深い黒い瞳。「まず、病院だ」瑠々は指をぎゅっと縮め、うなずく。「そうね、蒼空の様子を見に行きましょう」無理に微笑みを作る。「でも、どの病院?」瑛司は迷いなく病院名を口にした。瑠々は小さく息を呑む。「どうしてわかったの?」「店から一番近い。遥樹は焦っていた。だから他に選ぶはずがない」「......そう」――遥樹が取ったのは特別個室の病室だった。静かで、遥樹が出入りする音だけが響いている。蒼空は点滴を受けながら横になり、遥樹が渋い顔で湯を替えたり点滴の様子を確認したりしているのを見て、くすっと笑った。「そんな顔しないでよ。別に死んだわけじゃないんだから」その言葉の一部に反応して、遥樹は即座に眉を吊り上げる。「まだ言うか」蒼空は唇を結び、黙りますって感じで目を伏せた。遥樹は立ち上がり、腰に手を当てる。「お前に振り回されるばかりだ。こんな夜中なのに病院に来るなんて」「はいはい、ごめんってば」「謝って済む話じゃない!」遥樹は苛立ち、今にもベッドから引きずり下ろしそうな勢いだが、けれどできない。できるはずがない。指さす勢いで言い募る。「お前、仕事を放り出して、家にも帰らず、寝もしないで一人でバー行って飲んで、挙句薬盛られて......お前さ、一体どこまで俺を怒らせる気?」蒼空は視線をそらし、「......ごめんね。面倒かけて」と小さく言った。遥樹は眉を寄せる。「その態度改めろ。軽く流すな。お前は薬盛られたんだぞ。俺が少しでも遅かったらどうなってたか、わかってんのか。泣いても遅いんだぞ!」「ごめんなさい、もうしません。本当にわかったから、もういいでしょ」蒼空は点滴していない方の手で耳をふさぎ
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