瑛司は「ああ」と短く応じ、窓の外に視線を向けて言った。「もうすぐ着く。着いてから話そう」今日は平日で、しかも夏休みや冬休みの時期でもない。観光客はまだ少なく、浜辺には人影がまばらだった。蒼空の言っていたとおり、月港は取り立てて目新しい場所ではない。ただ一面の砂浜と、果てしなく続く海が広がっているだけだ。周囲には整った建物が並び、土産物店や飲食店が点在している。彼女の記憶にある景色と、ほとんど変わっていなかった。再び月港の砂浜に足を踏み入れる。海風が吹き、日差しは穏やかで、碧い海と青空が目にまぶしいほど美しい。その光景に、蒼空は一瞬、現実感を失った。無意識のうちに、あのとき自分が立っていた砂地を探している。記憶はあまりにも鮮明で、蒼空はすぐに、海へ飛び込んだ場所を見つけた。それは砂浜の中でもひときわ目立たない一角だった。海水は海風に揺らめき、ここに立った女が、この美しい海で命を落としたなど、誰も想像しないだろう。死の記憶はあまりにも強烈だった。海水に口と鼻を塞がれ、徐々に息ができなくなっていく感覚。骨身に沁みる冷たさに震え、あらゆる感覚が次第に薄れていく中で、胸に抱いた骨壺だけが、やけに鮮明に存在を主張していた。実際、穏やかな海面を見つめていた蒼空は、思わず身を震わせた。「寒いのか?」瑛司の声が、蒼空の前に立ちはだかる高い壁を越えて、耳に届く。蒼空は腕を抱き、隣に瑛司がいることをはっと思い出して、軽く首を振った。「いいえ」記憶から意識を引き戻し、彼に言う。「それで、夢の話の続きは?」瑛司は蒼空の顔を見つめ、その表情の変化を見逃さなかった。今の彼女は顔色がやや青白く、車中では保っていた距離感のある笑みも、すでに消えている。瑛司は視線を引き、彼女と並んで海を眺めた。そして、唐突に言った。「お前が海に飛び込む夢を見た」蒼空の胸が、どくりと大きく跳ねる。反射的に瑛司を振り返り、呼吸が止まり、体の内側から冷えが広がった。瑛司は、自分の言葉がどれほど衝撃的か、まるで自覚していない様子だった。ゆっくりと彼女の目を見つめ、もう一度繰り返す。「お前が海に飛び込む夢だ。ここで」蒼空の頭の中が、一瞬で真っ白になった。胸の鼓動が次第に速まり、太鼓を打
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