离れた位置からでは、右上に貼られた写真しかはっきりとは見えなかった。遥樹は先入観でそれを求人用の履歴書だと思い込み、手を伸ばしながら言った。「うちって、求人してる?」その言葉に、蒼空と小春の視線が同時にその資料の束へ落ちる。蒼空は口を開きかけ、しばし呆然とした。小春はすぐさま目を見開き、ソファから飛び上がった。小春は身を屈めて手を伸ばし、遥樹が触れるより先に資料を奪い取った。そして遥樹の訝しげな視線を受けながら、資料を胸に抱きしめ、頭皮がぞわりとしつつも笑顔で言う。「これは社内機密だから。見せられないの」遥樹は蒼空を振り返った。「......俺が見ちゃいけない社内機密って、あるのか」明らかに、蒼空も小春の様子に呆気に取られていた。小春は顔色一つ変えずに資料をくるくると丸め、笑って言う。「さあ、どうでしょう」遥樹は小さく笑い、腕を組んで蒼空と並んでソファに身を預けた。「まあいいか」小春は資料を自分の背後に押し込み、ソファに座り直して、テレビに集中しているふりをした。遥樹が蒼空に尋ねる。「今日は何か予定ある?」小春は即座に耳を立て、真剣に聞き入った。蒼空は少し迷ってから答える。「今夜は用事があるの」遥樹は当然のように、仕事相手との会食だろうと思った。「仕事の予定?秘書が組んだスケジュールは確認してるけど、今週末は空いてたはずだが」蒼空は唇をきゅっと結ぶ。小春は彼女の顔をじっと見つめ、心臓が限界まで早鐘を打つ。まるで自分が当事者になったかのような緊張だった。「それは――」蒼空が二言目を口にしかけた、その瞬間、遥樹のスマホが鳴り、彼の注意はそちらに移った。蒼空はなぜか、そっと息を吐く。予想していた修羅場が訪れなかったことに、小春は少しだけ残念で、同時に少し安堵した。蒼空は、遥樹がスマホを取り出すのを見て、画面に表示された名前も一緒に目にする。――菜々。その名前を見ても、まだ何も考えが浮かばないうちに、遥樹がなぜか彼女をちらりと見た。蒼空は首を傾げる。「どうしたの?ずっと鳴ってるわよ、出ないの?」遥樹はスマホを握りしめ、表情の読めない目で言った。「......ああ」電話に出た途端、向こうからすすり泣く声が聞こえてきた。小さ
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