小春が話していた細かな情景が、今、すべて彼の目の前に広がっていた。小春は、共同プロジェクトの関係で柊平が頻繁に蒼空と食事を共にし、花束まで何度も贈っていると言っていた。想像するのと、実際に目にするのとでは、やはり重みが違う。遥樹の胸の奥には、抑えきれない怒りが澱のように溜まっていた。「......これ、誰が頼んだ?」低く沈んだ声が響き、蒼空は彼を見る。「どうしたの?遥樹、お腹空いてる?」遥樹は彼女を見つめたまま、何も言わない。柊平は視線を落として小さく笑い、口を開いた。「蒼空さん、今夜来る前に何も食べていませんでしたので、私が頼んだんです。ちょうどここの料理が好きだと聞きました」蒼空が続ける。「そうなの。でも、もうほとんど食べ終わっちゃったよ」遥樹はまた黙り込んだ。蒼空は、今夜の遥樹がどこかおかしいと感じていた。「......どうかしたの?」問いかけても、遥樹は唇を引き結んだまま、答えない。服装を見る限り、堅い場から直行してきたのだろう。仕事で厄介な問題を抱えているのかもしれない、そう蒼空は思った。柊平が場を和ませるように言う。「とりあえず片づけましょうか。外で話そう、もう遅いですし」蒼空の声も少し軽くなる。「そうね」二人が片づける様子を、遥樹は無表情で見つめながら思う。――本当に息が合っている。片づけが終わり、蒼空は遥樹の隣へ来た。「終わったよ。行こう」遥樹は何も言わず、彼女の後をついていった。ビルの下までの道中、遥樹は終始無言だった。蒼空と柊平はプロジェクトの話を続け、後ろの遥樹はまるで存在しないかのようだった。それでも蒼空は、背後からひやりとした気配を感じ続けていた。柊平は遥樹を会話に引き込もうと何度か話題を振ったが、遥樹は頭が止まったように短く「ああ」と返すだけで、それ以上口を開かなかった。蒼空は理由がわからず首をかしげたが、幸い柊平は気にしていない様子だった。柊平を車まで見送る際、蒼空は遥樹に会社の入口で待つよう言い、柊平と二人きりで話した。「ごめんね。どうしたのかわからないけど、彼のこと、許してあげて」柊平は笑った。遥樹の無礼を本気で気にしていない笑顔だった。「大丈夫、気にしてないよ」蒼空も笑って言う。「それ
Read more