フィールド中央で、クロとジンが向かい合っていた。先ほどまでの一方的な展開とは、明らかに空気が変わっている。クロの雷は安定し、ジンも初めて真剣な表情を見せていた。「……感情制御ができるようになったか」ジンが静かに呟く。「なら、僕も少し本気を出そう」ジンの周囲に、これまでとは比べ物にならない雷が渦巻き始めた。青白い光が空間を歪ませ、観客席にまで電流が走る。「うわあああ」「何だあの魔力……」「次元が違う……」観客席がざわめく中、クロは冷静にその雷を見つめていた。《出力レベル、従来比400%以上。これが本気の演算》「やっぱり、桁が違うな」クロが苦笑いを浮かべる。「でも――」クロも左手に雷を集中させた。安定した青白い光が、静かに輝く。「俺にも、見せるもんがある」その瞬間、二人が同時に動いた。「雷式・閃雷撃!」「雷閃式・迅雷斬!」二つの雷が空中で激突する。バチバチと火花が散り、衝撃波が観客席まで届いた。「互角……?」「クロの雷が、ジンと拮抗してる……」観客席から驚きの声が上がる。しかし、ジンは冷静だった。「一撃が通った程度で、勝った気になるな」次の瞬間、ジンの姿が消えた。「雷閃式・神速移動」高速移動でクロの周囲を駆け回るジン。残像が複数見える中、どれが本物かわからない。「どこだ……」クロが警戒している時、背後から声がした。「ここだ」振り返った瞬間、ジンの雷拳が迫っていた。「雷閃式・雷神拳」クロは咄嗟に雷で防御したが、衝撃で前方に押し出される。着地と同時に、今度は右側から攻撃が来た。「雷閃式・連続雷撃」ジンが高速移動しながら、連続で雷撃を放ってくる。クロは必死に回避と防御を繰り返すが、徐々に追い詰められていく。「くそっ……速すぎる」《相手の移動パターン、解析困難。不規則性が高い》(パターンがないってことか……)その時、観客席からカイの声が響いた。「クロ!慌てるな!相手をよく見ろ!」カイの声に、クロは少し冷静になった。(そうだ……慌てちゃダメだ)クロは目を閉じ、全身の感覚を研ぎ澄ませた。風の流れ、魔力の残響、わずかな気配の変化。(……見えた)クロが突然動いた。ジンの攻撃が来る直前に、最小限の動きで回避する。「なっ……」ジンが初めて、驚いた表情を見せた。「予測したのか?
Last Updated : 2025-08-23 Read more