観客席の熱気が、リング上の張り詰めた空気と対照的だった。ミナとフィアが対峙する戦場には、まるで時が止まったような静寂が流れている。二人の間に立つ審判が手を上げた瞬間、空気が震えた。「始め!」最初に動いたのはミナだった。「いくわよ、フィア!」右手を振り抜くと同時に、炎の弾丸が三発、フィアへ向けて放たれる。だがフィアは一歩も動かない。左手を軽く上げると、氷の壁が瞬時に立ち上がり、炎弾を完璧に遮断した。「……やっぱり、簡単にはいかないわね」ミナが小さく舌打ちする。氷壁が砕け散り、その破片がキラキラと光を反射しながら宙に舞った。フィアは無言でその破片を操り、矢のようにミナへ向けて放つ。「甘いわよ!」ミナは慌てて横に跳び、地面を転がるように回避する。同時に反撃として手首を振ると、符術が起動した。「火式・焼尽符《バーン・レイ》!」地面に炎の線が走り、フィアの足元へ向かって伸びていく。フィアは軽やかに横へ跳び、炎を回避。その動きは無駄がなく、まるで最初から炎の軌道を読んでいたかのようだった。「予測通りね」フィアの冷静な声と共に、着地と同時に氷の槍が展開される。「氷式・穿氷槍《アイス・ランス》」鋭い氷槍がミナの胸部を狙って飛ぶ。ミナは反射的に炎の盾を展開するが、氷槍の威力は想像以上だった。「うっ――」盾が砕け、衝撃でミナの体が後方に押し戻される。それでもミナは諦めなかった。すぐに体勢を立て直し、両手に炎を集中させる。「まだまだよ!遅延起爆符――今よ!」先ほどの炎線に仕込まれていた時限符が爆発する。だが、フィアはすでにその場所にいなかった。「読めているわ、ミナ」背後からの冷たい声。振り返ったミナの目に映ったのは、フィアの氷の刃だった。「氷式・霜花刃《フロスト・エッジ》」氷の刃がミナの頬をかすめ、細い血筋が浮かぶ。「っ……速い!でも――」ミナは両手に炎を集中させ、距離を取ろうとする。「こっちだって、本気よ!火式・双爆拳!」左右から同時に放たれた炎の拳。今度はフィアも少し本気を出した。「氷式・氷華防壁《アイス・フラワー・ウォール》」美しい氷の花のような壁が展開され、炎拳を受け止める。しかし、ミナの炎は先ほどより威力が上がっていた。氷壁にひびが入り、一部が溶け始める。「やるじゃない」フィアが初め
Last Updated : 2025-08-13 Read more