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背中合わせの戦士

Auteur: 吟色
last update Dernière mise à jour: 2025-08-25 17:07:15

黒いローブを纏った男たちが、破壊されたフィールドを取り囲んでいた。

その数、約20名。

全員が高度な魔術装備を身につけ、統制の取れた動きを見せている。

「オブシディアン機関……」

クロが歯を食いしばる。

聞いたことのない組織だったが、その殺気と装備から、ただ者ではないことがわかった。

「研究所って何だよ……俺たちを実験動物にするつもりか」

「そう理解してもらって構わない」

先頭の男――指揮官らしき人物が冷静に答える。

「異常演算者は貴重なサンプルだ。特に君たち二人は、対照的なタイプで研究価値が高い」

ジンが低く呟く。

「……僕たちを観察していたというのは本当か」

「もちろんだ。君たちの戦闘データは、すべて記録済み」

男が不敵に笑う。

「『完全制御型』と『感情直結型』……興味深い対比だったよ」

その時、クロの脳内でゼロの声が響いた。

《外部観測波を多数検出。長期間の監視を確認》

(やっぱり見られてたのか……)

《さらに問題がある。彼らの装備、異常演算抑制装置を確認》

(抑制装置?)

《異常演算を封じる技術。包囲されれば、君の力は使えなくなる》

クロは冷や汗を流した。

満身創痍の上に、異常演算まで封じられたら勝ち目はない。

「さあ、大人しく――」

男が手を上げかけた時、ジンが口を開いた。

「待て」

「何だ?」

「一つ聞きたい。なぜ今なのか?」

ジンの目が鋭くなる。

「僕たちが消耗した今を狙ったということは、正面から戦う自信がないということか?」

男の表情が一瞬、強張った。

「……余計なことを」

「やはりそうか」

ジンが冷笑する。

「異常演算者を研究したいなら、まず僕たちに勝ってからにしろ」

「勝負を挑むというのか?満身創痍で?」

「満身創痍だろうと、僕は僕だ」

ジンが構えを取る。

その姿に、クロは少し見直した。

(やっぱり、こいつは強いな……プライドの部分で)

クロも構えを取った。

「俺も同感だ。研究されるくらいなら、戦って散る」

「ほう……」

男が面白そうに呟く。

「では、君たちの実力とやらを確認させてもらおう」

男が手を振ると、部下たちが一斉に魔術を発動した。

「制圧術式・展開!」

「拘束魔法・起動!」

「演算封印・発動!」

様々な魔術がクロとジンに向かって飛んでくる。

「やるぞ、クロ」

「ああ、ジン」

二人が背中合わせに立った瞬間――

「雷閃式・雷帝領域!」

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