オブシディアン機関を撃退してから一週間。学院には、久しぶりの平穏が戻っていた。破壊された箇所の修復も完了し、警備体制も万全。生徒たちも、いつもの日常を取り戻している。「はあ……やっと普通の授業だ」クロが教室で、ため息交じりに呟く。机の上には、相変わらず赤点だらけの答案用紙。「お前、平和になった途端にまた成績落ちてるじゃねえか」カイが隣の席から覗き込む。「戦闘ばっかりやってたから、勉強忘れちゃったんだよ」「言い訳すんな」ミナが呆れ顔で突っ込む。「もともと勉強できなかったくせに」「うるせー」そんないつものやり取りに、クロは心地よさを感じていた。平和って、こういうことなんだな。「クロくん、今度一緒に勉強しない?」サクラが優しく提案する。「マジで?助かる」「うん。みんなでやろう」「俺も混ぜろよ」カイが手を上げる。「私も参加するわ」ミナも意外にも積極的だった。フィアとレインも、無言で頷く。「じゃあ、今度の日曜日にでも」「図書館で集まろうか」計画を立てている時、教室に一人の人物が入ってきた。ジン・カグラだった。以前なら、教室の空気が一気に緊張したものだが、今は違う。みんな、普通に挨拶する。「おう、ジン」「おはよう」ジンも軽く手を上げて応える。その変化に、クロは改めて感慨深いものを感じた。(本当に変わったんだな、こいつ)「ジン、勉強会に参加するか?」クロが聞くと、ジンは少し考えた後、頷いた。「悪くない。参加しよう」「よし、決まりだな」こうして、平和な日常が戻ってきた。しかし、クロには一つ気になることがあった。共鳴の副作用は、まだ完全には治っていない。時々起こる頭痛と、記憶の混濁。それは、ジンも同様だった。放課後、中庭のベンチで二人は並んで座っていた。「……まだ、頭痛があるか?」「ああ。お前もだろ?」「時々、自分が誰なのかわからなくなる」ジンが珍しく弱音を吐く。「異常演算の代償は、想像以上に重い」「でも、後悔はしてない」クロがきっぱりと言う。「この力があったから、みんなを守れた」「……そうだな」ジンも同意する。「代償があっても、手に入れる価値はあった」二人は空を見上げた。夕陽が雲を染めて、美しい光景を作り出している。「平和だな」「ああ。でも……」ジンの表情が少
Last Updated : 2025-09-06 Read more