真衣は沙夜を支えて言った。「前もって避難してるかもしれない。先輩は慎重な人だもの」沙夜は、涙を流して首を振った。彼女は誰よりもよくわかっていた。安浩は観測所の内部にいた。突然の爆撃に備える余裕などなかったはずだ。沙夜の頭の中に、次々と恐ろしい光景が浮かんだ。崩れ落ちる建物や燃え盛る残骸、立ち込める硝煙……考えたくないのに、考えずにはいられなかった。安浩は出発の朝、「必ず戻る」と言っていた。彼は優しく、いつも沙夜を守ってくれていた。彼女は、密かに彼を想い始めていたのに……彼の身に、何があったのだろう。遠くで聞こえていた砲撃音が、心なしか近づいてきているように感じた。二人の心とは裏腹に、実験室の灯りが辺りを明るく照らしていた。通信機は沈黙したままだった。GPSの画面も真っ暗なままだった。沈黙が、最悪の事態を告げていた。沙夜は血色を失い、傍にあった椅子に崩れ落ちるように座り、ぼんやりとした虚ろな目で前を見つめた。彼が戻って来てくれるなら、どんな覚悟もできる。彼女は心の中で、何度も祈った。-翌日。夜が明け始めた頃、遠くで響いていた砲撃音はようやくまばらになり、一晩中続いた銃撃戦はひとまず収まったように見えた。しかし、辺りは焦げ臭く、土埃が舞い、風に乗って微かに血の匂いが漂っていた。真衣は臨時指令室で、一睡もせず、目の前のテーブルには、通信機や戦況図が広げられていた。安浩との通信やGPSが途絶えた時から、真衣はずっと気を緩めていなかった。支援部隊と連絡を取って突破口を探り、後方の緊急対応策を調整し、さらに精神的に限界に達している沙夜を支えなければならなかった。沙夜は、一晩中ぼんやりとしていた。まるで、泣かずにいれば、安浩が無事でいていくれると信じるかのように、彼女は込み上げる涙を、必死に堪えていた。沙夜は食事はおろか、水も飲まず、大きく息をすることをも恐れ、耳をずっと通信機に押し当てていた。「安浩さん……」彼女は心の中で何度も呟いた。「お願い、どうか無事でいて……」崩れた瓦礫や、燃え盛る炎を想像すると、沙夜はたまらなく不安になった。ほんの数日前まで、彼は飛行機で彼女を気遣い、部屋ではクラッカーや紅茶を用意し、「何を見てるの?」と優しく尋ねてくれていたのに。あんなに優しく
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