清楚に見えて、実は中身は冷酷なのだ。見た目は穏やかで無害そうだが、実は腹黒。優しさという名の皮を被って、タイミングを見計らってはズバッと刺してくる。その一撃で、相手はボロボロになる。夕食後、安浩はデータを整理するために製造現場へ向かった。真衣は工場の周辺を散歩していた。ここ周辺はほとんどが工場だ。一般的に、製造工場は市中心部から遠く離れた郊外にある。あたりは暗くなり、太陽は沈み、空はオレンジ色に染まっている。真衣は美しい景色を眺めながら、携帯を取り出して写真を2枚ほど撮った。真衣は、日常の中にある小さな幸せや美しさを、心から大切にしている。ただ、最近は工場に行ったり来たりで忙しくて、ここで空をじっくり眺める時間がなかなかなかった。夕陽が真衣の影を長く引き伸ばしている。華奢な背中が、どこか物寂しげに見える。真衣は振り返って歩き出した。すると、工場の正門で萌寧にばったり会った。萌寧は明らかに不機嫌な顔をしている。萌寧は事の経緯をすべて把握した。住岡社長が提供した原材料は、基準を満たさない欠陥品だった。すでに製造に使われており、回収は不可能なので、すべて破棄せざるを得なかった。萌寧が住岡社長と締結した高額な契約に関しては、萌寧はすでに一回目の発注分の前金まで支払ってしまっていた。合計すると、萌寧たちはおよそ数十億円ほどの損失をした。会社は設立されたばかりなのに。萌寧はお金を稼ぐ前に大金を失い、何も達成することなく自滅した。「わざとやったんでしょ?」萌寧の声は冷たかった。萌寧は真衣と決着をつけたいと思っているようだ。真衣は立ち止まり、目には笑みが浮かんでいる。ただ、その笑みにはひときわ嘲りが滲んでいる。真衣はぱちぱちと瞬きをしながら、とぼけたように言った。「わざとって、なにが?」「まだバカなふりをしているの?わざと住岡社長と私達をくっつけたのはあなたでしょ?」「これであなたに何のメリットがあるのよ?」真衣は少し可笑しく感じ、淡々と髪を整えた。「住岡社長?私たちは確かに心から住岡社長と協力したいと思っていたけど、結局あなたに横取りされたじゃん?」「この結果はあなたが望んだものではないの?」真衣は、いかにも「私、無関係です」という顔をしているが、その見せ方が実に巧
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