「中に入れ」熱々の料理が運ばれてきた。お手伝いさんが部屋の中に入ってきて料理を置くと、余計なことをせずにすぐに出て行った。礼央は真衣を見た。「一日中何も食べてないんだろ。食事を済ませたら家まで送るよ」「自分の車で来たわ」つまり、礼央に送ってもらう必要もないし、送ってほしくもないという意味だ。「お前が住んでいるマンションまで送るよう手配しておく」礼央が言った。「今の状態では運転しない方がいい」「死にたければ別にいいけど、千咲は巻き込むな」真衣は眉をひそめた。目の前に置かれた料理は、どれも真衣の好物ばかりだ。「富子おばあさんが届けさせたの?」礼央は窓際に立って、淡々と言った。「富子おばあちゃん以外に、お前の好物を知ってる人間がいるか?」真衣は、もちろん礼央が準備したなんてそんなに自惚れたりはしなかった。仮に礼央が用意したとしても、それは富子の前での演技に過ぎない。真衣は言った。「あなたがここにずっといる必要はないわ」礼央は何も言わず、そのまま部屋から出て行った。礼央もまた、真衣と一緒にいたくないようだ。真衣にはそれが痛いほどわかった。今や二人は見知らぬ間柄から、互いにうんざりする関係へと変わっていた。千咲はママが目を覚ましたと聞くと、すぐに自分の部屋からタブレットを抱えてやってきた。「誰のタブレット?」「おじさんの──」千咲は手に持っていたタブレットを置いた。「ママ、具合はどう?」「良くなったよ」頭はまだ少しぼんやりしていて、気分もあまり優れていないが、熱は下がっていた。真衣は千咲を見て、「夕食と昼食はもう食べたの?どうしてママを起こしに来なかったの?」と聞いた。「ママはゆっくり休む必要があるから、邪魔しないと思ったの」千咲は唇を引き締めて言った。「私も最近、ママはちょっと疲れすぎていると思う。いつも寝不足で、夜中の2時か3時にトイレに起きると、ママはまだ仕事をしていて、翌朝7時にはもう起きて幼稚園まで送ってくれて、朝ごはんも用意してくれているんだよ」「幼稚園の先生が、人間は6時間から8時間寝ないといけないって言ってたけど、ママは全然足りてないし――」「さっきのお医者さんたちが言ってたよ。ママは夜遅くまで忙しくて免疫力が低下して、体調が悪くて、貧血や低血糖
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