個室の病室の方は静かで、人通りもほとんどない。真衣は痛みに耐えながら深く息を吸い込み、手を地面につけて立ち上がろうとした。しかし、風邪と発熱で体がふらつき、震えが止まらなかった。真衣は必死に壁を支えにして立ち上がったが、膝と肘の痛みが全身に広がっていった。顔の片側は相変わらずひどく痺れている。その瞬間、真衣の胸の中で溜まっていたすべての感情が洪水のように溢れ出し、真衣の心を完全に飲み込んでしまった。真衣は壁に手をつき、細い背中が震え、目の周りが赤く、鼻先に涙が込み上げるような痛みを感じた。真衣は自分が不公平に扱われているとは思わなかった。ただ、無力感が波のように押し寄せ、まるで海に飲み込まれていくように、四方八方からその圧力に包み込まれ、呼吸することさえ許されなかった。真衣は唇を強く噛みしめ、深く息を吸った。真衣は普通の病室に向かって歩き始めたが、少し自分の体調を過信していた。真衣が足を踏み出した瞬間、急に力が抜けて、もう一度倒れそうになるのを必死でこらえた。突然、大きな手が真衣の手をがっしりと支えた。「風邪で熱が下がっていないのに、どこへ行くつもりだ?」真衣は顔を上げると、礼央の深い瞳と目が合った。真衣は何も言わず、礼央の手を激しく振り払った。真衣は力強く二歩ほど後退りした瞬間、ふらついて力が抜けそうになったが、真衣は必死に後ろの手すりを握りしめ、倒れないように耐えていた。礼央は眉をひそめ、真衣の青白い小さな顔に赤く腫れた掌の跡があるのに気づいた。「真衣、今はわがままを言っている時ではない。医者に診てもらおう」真衣はうつむき、髪が胸元に乱れ落ち、顔の横にかかる髪の隙間から見える表情は、ますます陰鬱で曖昧なものになっていった。手すりを握る手が、強く震えていた。なぜ礼央は、ついさっきまで自分と病室を奪い合っていたのに、次の瞬間に自分に対して優しく接しているんだろう?皮肉なのは、礼央が全く自分の感情に気づかずに無視してきた。今、自分がこんなにも辛い思いをしているのに、礼央はそれを気にせず、ただ自分が気を悪くしているだけだと思い込んでいる。病室の問題は、決して小さなことではない。萌寧のおじさんの命は大切で、自分のおじさんの命は大切じゃないっていうわけ?今、礼央は一体何をしに来たんだろう
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