宗一郎は軽く頷くと、すぐに頭を上げて真衣たちの方を見た。「先に色々と遊んだり食べたりしていて。すぐ戻るから」宗一郎の去っていく後ろ姿を見送りながら、沙夜は感心したように頭を横に振った。「ほら見て、これぞハイスペック男子って感じよ。顔はイケてるし、背も高くて体格もいい。人付き合いもうまいし、何より女の子に気配りができるのがポイント高いよね」真衣は沙夜を見て言った。「もし山口社長のことが好きなら、狙っていくね」「??」沙夜はすぐに目を丸くした。「ねえ、あんたバカ?山口社長があんたが好きなのは、誰かが見ても明らかなことわよ。なのに私に山口社長を狙えって?私を笑い物にでもしたいわけ?」「私も安浩さんも分かってるのよ。山口社長がただおもてなしのつもりなら、アシスタントに任せて適当に予定を組ませれば済む話でしょ?なのに、この数日間ずっと自分たちに付き合ってくれてるんだよ?これは普通じゃないって。あと、特にあんたのプライベートのことについても気にしていたじゃない」沙夜は苛立ちを隠さずに言った。「なんでこういうときに限ってそんなに鈍感なの?いい男に出会った途端、まるで脳が機能停止するかのようになるの?」「……」真衣は無言になってしまった。真衣は直近で起きた出来事を頭の中で整理した。確かに、思い当たる節はいくつかあった。とはいえ、自分もいくらなんでも人としてここまでは自惚れていない――自分と山口社長は仕事上の付き合いだけで、プライベートでの交流はほとんどない。恋愛関係に発展するほどでもない。真衣は落ち着いて返した。「そういうことは軽々しく言うもんじゃないよ。人の評判を傷つけないで」「……」沙夜はフンと不服そうに鼻を鳴らした。「まあ見てて。後で山口社長があんたに告白してきた時にびっくりなんてしないでね」安浩は失笑した。「沙夜は君が大会で緊張しないように、気分転換をさせたかったんだよ」真衣は安堵のため息をついた。「でも、沙夜の言ってたことも少しは的を射ているかもしれないね……」「……」真衣がまた黙り込んでしまった。真衣はくるりと向きを変え、その場を離れて別の場所へ歩いて行った。ちょっとしたパーティーではあるが、用意されているものはどれも丁寧で上品だ。フルーツの盛り合わせやケーキもたくさん並べられている
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