萌寧は、爪がほとんど手のひらに食い込むほど手を握りしめ、真衣を憎々しい眼差しで見つめた。真衣はそばに立ち、淡々とした冷たい表情で、まるで萌寧の醜態を見物するかのようだった。真衣はただそこにいるだけで、まるで世界を手にしたかのようだった。ちょうどその時、テレビ局の取材班が到着した。進学祝いパーティーの取材だ。友紀は翔太のために、特別にインタビューを手配していた。高瀬家の後継者として、何事も華々しく執り行わねばならない。そして翔太も、早くからインタビューの準備を整えていた。隆はテレビ局の到着に気づいた。「今日は進学祝いがあるので、この件は一旦ここで終わりにしよう」隆は今日の主役である翔太に視線を移した。テレビ局はタイミング悪く到着し、現場で何が起きているか知る由もなかった。そうだわ――翔太。自分にはまだ翔太がいるわ。翔太は千咲よりもずっと優秀だわ。自分の息子は優れた遺伝子を持っている。何より高瀬家の後継者だからね。やがて高瀬家は全て自分たちのものになる。自分は負けてなどいない。まだ切り札がある。今日の出来事は、次から次へと面白い展開を見せている。翔太はインタビューを受けるのに準備万端だった。これは生放送だ。千咲が出てくると、翔太が人々に囲まれているのが見えた。萌寧は冷たい表情で真衣の前に歩み寄った。「あなたが望むものは、もう二度と手に入らないわ」真衣が求めた礼央の愛は、今は自分のものだわ。高瀬家の奥様の座も、自分のものだわ。自分は正々堂々と高瀬家に嫁ぐ。礼央はすでに自分のために道を整えている。自分は彼の愛人などではない。真衣は冷たい視線で萌寧を一瞥した。萌寧にとって重要なのは、こうしたものばかりだ。萌寧の野心は大きく、高瀬家が欲しく、高瀬家の主になりたがっている。礼央は萌寧を愛しているから、当然名実ともにこれらを与えるだろう。真衣は一言も発せず、千咲の元へ向かった。彼女は礼央の横を通り過ぎた。礼央の視線には何の感情も読み取れず、彼は何も言わなかった。真衣には、礼央が今ここで何を考えているのかわからなかった。翔太はインタビューを受けていた。真衣はまたヒソヒソ話を耳にした。「お嬢様と御曹司の進学祝いのはずなのに、どうして一人
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