「左鳥……左鳥! 左鳥!!」 時島の大声で俺が目を覚ましたのは、丸二日眠った後の事だった。「紫野は?」「――帰った。バイトだ。第一声が、紫野の名前か。まぁ……良かった、目が覚めて」「俺、そんなに寝てたの?」「もう目を覚まさないかと思って、病院に連れて行こうかと――ああ、もう、本当に良かった」 明らかに焦燥感が滲む声が響いた。 何故そこまで時島が動揺しているのかは、日時の確認がまだおぼつかなかったので、俺には分からなかった。とにかく時島は動揺しているようで、起きあがった俺を抱きしめると、涙ぐんだ。「え」 あの時島が涙ぐんでいる。俺は、自分の具合が、そんなに悪いのだろうかと焦った。「蛇神に取り殺されるのかと思った。蛇の夢は見なかったか?」「見てないし、そんな馬鹿な……」 あははと、まさに字面の通り笑おうとして――時島家の記憶が鮮明に甦り、俺は笑顔のままで硬直した。蛇神は――取り殺したりする存在なのだろうか……? 俺は無性に外の空気が吸いたくなって、ベランダへと向かった。時島もついてきた。時島は、フェンスに手をかけながら、じっとビルの上についている赤い光を見ているようだった。冷静さを取り戻したようだ。「なぁ、時島。蛇神って、取り殺すのか……?」「そう言う場合もある。俺の母親は、それで亡くなったらしいからな。滅多に無いとは聞いている。ただ特に左鳥の場合は、憑き物筋以外から伴侶が選ばれたのは、二百年ぶりらしいから不安だった」「俺の家族とかにも何か、関係したりするのか?」「はっきり言う。分からない。記録が残っていないんだ。憑き物筋が相手の場合は、その家にも蛇神がつく――正確には、最も憑き物の中で力を持つ大神が」 正直に話してもらったのは嬉しかったのだが――勿論よく分からなかったわけではあるが……俺は腕を組む。 深々と酸素を吸い込
Последнее обновление : 2025-08-03 Читайте больше