永劫の要塞最上階。円形のホールに響く秩序王の声は、まるで天の声のように絶対的な権威を帯びていた。「この世界は混沌に満ちている」秩序王が玉座から立ち上がると、その姿がより鮮明になった。人間の形をしているが、全身が純白の光で構成されており、まるで概念が具現化したような存在だった。「戦争、貧困、憎悪、絶望——すべては人間の自由意志が生み出した悲劇だ」「だから何だっていうのよ」リリスが一歩前に出る。七つの核が共鳴し、彼女の周囲に虹色のオーラが立ち上った。「悲劇があるからこそ、喜びがある。苦しみがあるからこそ、愛が生まれる」「愚かな」秩序王が手を上げると、ホール全体が眩い光に包まれた。「感情など、非効率な反応にすぎない。完璧に管理された世界では、そのようなものは不要だ」光が収まると、ホールの様子が一変していた。無機質な白い空間に変わり、壁には無数のモニターが埋め込まれている。そこには世界各地の映像が映し出されており——すべてが画一的で、感情のない人々の姿があった。「これが私の理想とする世界だ」秩序王が誇らしげに説明する。「すべての人間が同じ思考を持ち、同じ行動を取る。争いも苦痛もない、完璧な秩序の世界」「それは世界じゃない」カインが剣を抜く。「それは牢獄だ」「牢獄? 違う。これこそが真の自由だ」秩序王の論理は倒錯していた。「選択の苦痛から解放され、迷いのない人生を送る。それが人間の幸福だ」「選択することこそが、人間らしさなのに……」ティセが震え声で呟く。画一化された世界の映像は、彼女の心を深く傷つけていた。「君たちのような異端者がいる限り、完璧な世界は実現しない」秩序王が両手を広げると、ホールの床に巨大な魔法陣が浮かび上がった。「だから、排除する。君たちの存在そのものを」魔法陣から立ち上る光は、これまで見たことがないほど強力だった。まるで太陽を直視しているかのような眩しさ。「みんな、散開して!」リリスの指示で、六人はそれぞれ異なる方向に散った。秩序王の攻撃は範囲が広いが、同時に複数の相手を狙うのは困難なはずだ。「無駄だ」しかし、秩序王は余裕を崩さない。「私は同時に無限の存在を認識し、対処できる」実際、秩序王から放たれた光の束は、六人全員を同時に追跡していた。まるで意志を持った生き物のように、それぞれの動きに合わせ
Last Updated : 2025-08-30 Read more