アリアが生まれてから一年が経った。「ママ、ママ」小さな声で呼びかけながら、アリアがリリスに向かってよちよち歩きをしている。普通の子供より少し早い成長だが、それも彼女の特別さの現れなのだろう。「はい、ここよ、アリア」リリスが腕を広げて娘を迎える。アリアが母親に抱きつくと、周囲の花々がふわりと光った。もう家族にとっては見慣れた光景だが、初めて見る人は必ず驚く。「今日も元気ね」リリスがアリアの頬にキスをする。娘の肌は人間の子供と変わらず柔らかいが、時々魔力の温もりを感じることがある。「パパは?」アリアが片言で尋ねる。言葉を覚えるのも早く、もう簡単な会話ができるようになっていた。「お仕事よ。夕方には帰ってくるわ」カインは自由騎士団での指導の他に、最近は「魔女・人間融合教育プログラム」の開発にも携わっている。アリアのような子供たちが増えることを想定した、新しい教育システムの構築だった。「あーちゃん、ちょうちょ」アリアが庭を指差す。確かに蝶々が飛んでいるが、それは普通の蝶々ではない。虹色に光る、魔法の蝶々だった。「アリアが作ったのね」リリスが感心する。娘は意識せずに魔法を使う。それも、常に美しく、害のない魔法ばかりだった。「きれい」アリアが手を伸ばすと、蝶々が手のひらに止まった。そして、さらに美しく光り輝く。「本当にきれいね」リリスも一緒に蝶々を見つめる。娘の魔力は日に日に強くなっているが、制御不能になることはない。まるで生まれながらにして、魔力との調和を知っているかのようだった。午後、ティセが遊びに来た。彼女は今、魔女協会で子育て支援の仕事をしており、アリアのことも定期的にチェックしている。「アリアちゃん、こんにちは」「ティせ!」アリアが嬉しそうに駆け寄る。ティセのことが大好きで、会うといつも抱きついてくる。「今日も元気ね。何か新しいことできるようになった?」ティセがアリアと同じ目線にしゃがんで話しかける。「えーっと……」アリアが考え込んで、突然手をひらひらと振った。すると、空中に小さな光の玉がいくつも現れ、まるでダンスをするように舞い踊る。「すごい!」ティセが感嘆する。「これは新しい魔法ね」「あーちゃんの、ひかり」アリアが誇らしげに言う。自分の魔力を「ひかり」と呼んでいるのだ。「とても美しい光よ、アリア」リ
Last Updated : 2025-09-10 Read more