鏡の塔を後にして三日。カイン、リリス、そして新たに仲間となったティセの三人は、古い街道を南へ向かっていた。「次の核は……死者の夢道にあるのよね」リリスが魔導地図を確認しながら呟く。これまでに四つの契約核を手に入れ、残るは三つ。旅路も終盤に差し掛かっていた。「死者の夢道って、物騒な名前ですね」ティセが不安そうに呟く。彼女はまだ幻影魔術しか使えない新米魔女で、戦闘経験も乏しかった。「魂の核が眠る場所よ。生と死の境界が曖昧になる、危険な領域」リリスの説明に、カインは腰の剣を確認する。これまでの戦いで、彼の実力も格段に向上していた。四つの核の力が彼の中で共鳴し、新たな能力を覚醒させつつある。街道の途中で、一行は小さな村に立ち寄った。しかし、村の様子がおかしい。「人がいませんね……」ティセが村の中央広場を見回しながら言う。確かに、人の気配がまったく感じられない。家々の窓は閉ざされ、店の扉も固く閉まっている。「全員、家の中に隠れてるな」カインが鋭く観察する。恐怖で家から出られないでいるのか、それとも——「あの……すみません」リリスが一軒の家の扉を叩くと、しばらくしてから恐る恐る扉が開いた。現れたのは、中年の女性。顔は青ざめ、怯えた目をしている。「旅の者です。この村で何か起こったのですか?」「あ、あなたたち……よそ者ね」女性は周囲を見回してから、小声で続けた。「この村に……“死を呼ぶ女”が現れたの。夜になると、村人を一人ずつ連れ去っていく」「死を呼ぶ女?」「黒いドレスを着た美しい女性。でも、その瞳は死んでいて……触れられた者は魂を抜き取られてしまう」女性の話を聞いて、リリスの表情が変わった。「もしかして……ルアナ?」「リリス様、知り合いですか?」ティセが問いかけると、リリスは複雑な表情で頷いた。「ルアナ=レーヴァン。昔、私の配下だった魔女よ。でも……彼女は死んだはずだった」「死んだ?」「魔女狩りの時に。私の目の前で……」リリスの声が沈む。かつての仲間との再会は、必ずしも喜ばしいものではない。特に、死んだはずの者との再会は。夜が訪れると、村に異様な静寂が降りた。三人は宿屋の一室で待機していたが、真夜中過ぎに窓の外から美しい歌声が聞こえてきた。『眠りなさい……永遠の眠りに……』『魂よ、私のもとへ……』その声は魅惑的で、
Last Updated : 2025-08-17 Read more