「はっ!」孝宏は顔を引き締め、身を翻してその場を去った。何も聞かなかったが、彼はすでに全力で走っていた。梨花さんの身に、間違いなく何かあったのだ。桃子の指先がぐっと掌に食い込んだ。「一時的に連絡が取れないだけでしょう。そんなに……」彼女が言い終わる前に、竜也の鷹のように鋭い眼差しが彼女を捉える。その人を殺してしまいそうな眼差しに、彼女は一瞬にして凍りついた。一真も、彼が大袈裟に騒ぎすぎだと思った。「竜也、少し大げさじゃないか?」「捜すだけじゃない。しっかり調べるさ」竜也は意に介さず、低い声で、まるで歯の隙間から絞り出すように言った。「俺の目の届く所で、一体誰が彼女に手を出したのかをな」二十一階。梨花は全身を震わせ、自分を落ち着かせようとしたが、心の底から湧き上がる恐怖は抑えきれなかった。実のところ、彼女は貴之が怖かったのだ!十代の頃、シャワーを浴びている最中に突然、男にドアを破って入られた経験をして、トラウマを抱えずにいられる少女などいない。怖かった。でも、どうすることもできなかった。こんなことは何度もあったが、ただ今回、貴之は賢くなり、彼女に薬を盛った。体内の薬がまだ効いている。彼女は舌先を噛むことで、かろうじて意識を保っていた。「もし竜也が探しに来たら、怖くないの?言わなくても分かるでしょう、彼の性格なんて。お祖母様が守ってあげられるとでも本気で思ってるの?」実のところ、梨花も少し忘れていた。竜也と黒川お祖母様の関係が、いつからこじれたのか。とにかく、彼女が黒川お祖母様の屋敷に送り返されてからのことだった。二人は祖母と孫でありながら、そこに情はほとんど見られない。特にこの二年間、ほとんど顔を合わせることもなく、会えば一触即発の状態だった。年長者は若者を愛さず、若者は年長者を敬わない。これも黒川家の特有の気質の一つと言えるだろう。その言葉に貴之は一瞬怯んだが、すぐに開き直った。「あいつが本気で俺を始末する気なら、今お前を逃したところで、俺を見逃してくれると思うか?」「私が言わなければいい」「ちっ」貴之は彼女にやられたことがあったため、全く信用していなかった。彼は梨花の頬を軽く叩いた。その滑らかな感触に、全身の炎が下腹部へと駆け巡る。彼は梨花の服を乱暴に引き裂き始め、彼女が身
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