梨花は優しく微笑み、彼の手から料理を受け取った。「和也さん、ありがとうございます」和也の料理の腕がいいことは、彼女もずっと前から知っていた。二人が時々先生の家に行くと、若輩の和也はいつも自らキッチンに立った。テーブルに並んだ料理とスープは、どれも見た目も香りも味も完璧だ。綾香はわざわざ赤ワインを一本用意し、皆のグラスに注ぐと、赤い唇を綻ばせた。「乾杯!梨花がこれから自由に、自分らしくいられるように!」梨花は、こういったお涙頂戴の演出に一番弱い。彼女は必死に涙をこらえ、彼らとグラスを合わせた。「ええ、私の自由に乾杯」自由。子供の頃、彼女は自由になることを夢見ていた。レストランで一度食事を済ませてきたにもかかわらず、その場の雰囲気もあってか、彼女はかなり食べた。きっと、今感じている自由が、あまりにも心地いいからだろう。食事が終わると、和也が後片付けを手伝おうとした。しかし梨花はそれを断った。「和也さん、料理を作ってもらっただけでも十分なのに、残りは私たちがやりますから。下まで送りますね」「わかった」和也も彼女に遠慮はしなかった。今日は飲むことになるだろうと分かっていたので、車では来なかった。わざわざ運転代行を呼ぶ手間も省ける。梨花は今夜そこまで飲んではいないが、一歩踏み出すたびに少し足元がふらつく。彼女はできるだけしっかりとした足取りで、和也をマンションのエントランスまで送った。和也は梨花が酒に弱いことを知っているが、幸いにもここはセキュリティのしっかりした高級マンションだ。彼は少し歩みを緩め、隣の彼女を見下ろした。「自分で車を待つから、先に部屋に戻って休んでていいよ」「ううん……」梨花は首を横に振り、頑として道端へ向かって歩き続けた。「だめです。ちゃんとおもてなししないといけませんから」アルコールのせいで、梨花の透き通るような肌がほんのりと赤く染まっていた。彼を見上げる目元までもが、潤んでいて赤い。和也は思わずどきりとして、一瞬我を忘れた。「危ない!」一台の電動バイクが猛スピードで走り抜け、梨花にぶつかりそうになるその時、彼女が反応するより早く、和也がぐいっと彼女の腕を引いて自分のそばに寄せた。梨花は一瞬呆気にとられたが、酔ってはいても、まず体勢を立て直そうとした。そし
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