「彼女は嘘を言っていない」 涼介は淡々と言った。「副作用を50%低減させたこの薬は、すでに実験段階に入っている。梨花のこれまでの研究開発の経験から見ると、かならず成功する、失敗はありえない」 副作用の低減は、そう簡単に一足飛びで実現できるものではない。梨花は毎回、あらゆる方法を試して調整を行ってきた。 少しずつ、少しずつ低減させてきたんだ。 だが、彼女には確かに実力と才能があり、その調整は毎回成功している。 涼介はそれを目の当たりにして、心から感服していた。 翔平と武が顔を見合わせているのを見て、涼介はわざと付け加えた。「本来、佐藤リーダーはチーム名義で成果を提出しようとしていた。だが、今となっては君たちが一切関与していないのは明らかだ。それなら、研究開発者として記録されるのは、佐藤リーダーと和也だけでいいだろう」 翔平と武は呆気に取られた顔をしたが、今さら何かを言ってももう遅い。先ほど、あれほどきっぱりと断言して、自分たちの逃げ道を塞いでしまったのだから。 桃子の顔色もひどくこわばっていたが、すぐに気を取り直し、梨花に向かって言った。「今後、私たち二つのチームは共同で研究開発を行うのですから、佐藤リーダーに、その実験段階にあるその薬の具体的な処方を、ご説明いただきましょうか」 その言葉に、その場にいた者たちは皆、驚愕した。 その意図は、推測するまでもない。成果を横取りしようという魂胆が、あまりにも見え透いていた。 梨花は細い眉を吊り上げ、その厚顔無恥な顔を冷ややかに見つめた。「共同開発とは言いましたけど、何もしないで成果だけを得られるという意味ではありません。あなたが同レベルの成果を出してきたなら、私も隠し立てはしませんけど」 梨花にはもう桃子の魂胆が分かっていた。実力もないくせに、楽をして名声と利益を両方手に入れたい。やはり、よからぬことを企んでいるのだ。 会議が終わったら、ただプロジェクトに厄介者が一人増えただけだった。 共同開発という名目で、成果を横取りしようと狙っている厄介者が。 会議が終わると、梨花は一秒たりともそこにいたくなくて、和也と一緒に席を立った。 桃子がハイヒールを鳴らして追いかけ、梨花を呼び止めた。「ハッタリを言ってるだけでしょう。皆、
Read more