けれど――秀一が優しいからといって、甘えきるわけにはいかない。玲はふんわりと微笑み、静かに言った。「一緒に藤原家へ行きましょう。他の人のためじゃなく、お義母さんのために。……お義母さんに、お線香をあげたいんです。これからは、私が秀一さんをちゃんと守るって、伝えたいから」その言葉に、秀一の視線がぴたりと止まった。綺麗で、健気で、胸の奥まで甘い感覚で満たされるような、そんな笑顔。「君のことも……俺が守る。誰にも、君を傷つけさせない」「うん」玲は素直にうなずいた。これから参加する藤原家の集まりは大きな宴会のはずだ。さすがに、こんな場で誰かが無茶をするとは思えない。だから、秀一の言葉は――正直、少し大げさだと思っていた。……が。その考えは、やはり甘すぎたと思い知らされた。昼過ぎ。身支度を整え、秀一と並んで藤原家の本邸へ向かう。門をくぐった瞬間、ずらりと集まった藤原家の親族たちの中に綾と弘樹の姿があった。昨日、病院で泣き叫んで痛みに転げ回っていたあの綾が、だ。明らかに無理して退院してきたらしく、顔色は真っ青。弘樹の腕にすがりつき、少しでも動いたら傷がまた開きそうなほど弱々しい。けれど、玲と秀一が入ってきた瞬間――その目が、毒でも含んだみたいに鋭く光った。まるで、視線だけで殺そうとしているみたいに。だが秀一が冷ややかな目を向けると、綾の肩がビクリと揺れ、そして、恐れるように弘樹の胸元へ顔を埋めた。その横から、真っ赤に腫れた目元、濃い化粧で疲れを隠した美穂が、震える声で前に出た。「秀一さん、玲さん。綾がひどいことをして、本当に、ごめんなさい。お父さんも厳しく叱ってあげたから、もう半分、生きた心地もない状態なの。本人も反省しているし……どうか許してあげて。お願い……」「……」玲は、薄く眉を上げた。――なるほど。俊彦が綾に「必ず頭を下げさせろ」と命じたようだ。そのために、無理やり退院して、弘樹と並んでここに立っている。そして俊彦は、これを秀一に見せるつもりなのだ。綾が代償を払ったと、はっきり示すために。だが、綾がどれだけ弱々しく見えようと、秀一の表情は、一つも動かなかった。冷たく、淡々と、そして容赦なく言い放つ。「生きた心地がしない?あれだけのことをして、まだ生きてるだけ有り難く思え。……もしかして、
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