友也はもともと遠慮という言葉を知らないタイプだが、佳苗にここまで苛立たされたのは久しぶりだった。怒りに火がついた彼は、もはや相手の顔色をうかがう気など一切ない。「佳苗さん、お前さっき、秀一が社長の座についたのは、全部自分たちのおかげだって偉そうに言ってたよな。はっきり言わせてもらうけど、秀一が藤原家みたいな、ちょっと油断したら命まで落としちまうような環境で勝ち残れたのは――全部、彼自身の実力だ!」たしかに烏山家は秀一に恩がある。でも、美穂がいる藤原家で、秀一がどんな地獄みたいな日々を送ってきたのか、佳苗たちは何一つ知らなかった。なのに、秀一の人生がやっと上を向き始めた途端、佳苗はすぐ連絡をよこし――金が欲しい、家が欲しい、仕事をよこせとせがんだ。秀一は昔の恩を思って全部受け入れ、ただの一度も断らなかった。なのに烏山家は、それを「恩返し」だと思うどころか、当然のように受け取っていた。友也は冷ややかに微笑む。「佳苗さん、自分と比べて、玲さんの恩なんて大したことないみたいな言い方をしてたよな?けど、人に恩を押しつけて報酬をせびる時点で、お前は一生玲さんには勝てないよ!玲さんは秀一の母親の形見を見つけたとき、秀一が『恩を返したい』って言っても十年以上連絡すら寄こさなかった。やっと連絡が来たと思えば、『一度手を貸してくれたらそれで十分』って言っただけだ。……まあ、秀一が彼女と関わりを持ちたかったから、自分から何度も彼女を助けたけど、そもそも玲さんからは何かを頼んできたことなんて一度もなかった。だから、佳苗さん。恩を返してもらうために結婚を迫ったなんて、玲さんはそんなことをする図々しい女性じゃない。むしろ、秀一が少しずつつ彼女との距離を縮め、やっと結婚までこぎつけたのだ」そのとき、友也の脳裏に、かつてのあの衝撃の瞬間がよぎる。秀一が玲への、心の底に潜む想いをぶちまけた告白――友也は今でも思い出すだけで心がむず痒くなる。何せその告白を聞いたのは彼が初めてだった。その時のショックを、一生誰かに共有できないと思っていたが……視線をあげると、佳苗、健吾と由紀子の三人ともベッドの上で固まったまま、顔がまるで石のように青ざめていた。その様子を見て、友也は「今だ」と言わんばかりに、さらに爆弾を投下する。「ついでだ。本音を言うと――秀一は
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