素羽は何を考えているのか――この手のことは、老獪な利津にはお見通しだ。利津はこういう、口うるさい女が一番苦手だ。あれこれ首を突っ込んで、どこまでも図々しい。自分の母親ですらここまで干渉してこないのに、本気で新妻気取りか?まるで母親に成り代わって好き放題できるとでも思っているのか?でも、司野は特に相槌を打つわけでもなく、黙って煙草をくゆらせている。利津は続けて言う。「俺から言わせりゃ、素羽なんてさっさと切ればいいんだよ。あいつ、何一つ持ってないし、お前の仕事にも全く役に立たない。それどころか、あいつにいろいろ吸い取られてるじゃないか。好きでもないくせに、須藤家の奥様の立場だけ持たせてやって、何が楽しいんだ?切ってしまえばいい。仮に仕事に役立つ女を娶らなくても、美宜を家に迎えればいいじゃないか」司野は煙草の灰を落としながら、「くだらないこと言うなよ」とだけ返す。その一言に、利津は内心首を傾げる。くだらないって、どっちのことだ?素羽を切る話か、それとも美宜を迎える話か?話半分で終わらせる司野のクセには、いつも困惑させられる。あの事件以来、司野はまるで別人のようになった。友人の自分ですら、彼の本心はまったく読めない。たとえば、縁起直しのために急遽結婚した件だって、昏睡状態では決められなかったにせよ、目が覚めた後なら即刻、素羽を追い出していたはずだ。普通なら絶対、そのまま夫婦関係を続けるような真似はしない。……その夜、それぞれが思惑を巡らせて眠りにつく。そして翌朝、素羽は、頭が割れそうなほどの頭痛で目を覚ます。階下に降りると、使用人たちから注がれる視線がどこか違う。無理もない。義妹が夫とベッドを共にしたというスキャンダルが、どれほど面白おかしい御馳走になるか。それでも、素羽は平静を装うしかない。自分自身、どう振る舞えばいいのかわからないのだから。森山が近づいてくる。「奥様、朝食のご用意ができております」素羽は食欲がないが、無理にでも胃に詰め込むことにする。ダイニングで、作られた朝食を少しずつ口に運ぶが、何を食べても味気なく、喉を通らない。料理が悪いわけじゃない。ただ、素羽の心がもう限界なのだ。ようやく食事を終えたところで、素羽の携帯が鳴る。松信からだ。命令口調で一言。「今すぐ来い」電話を取
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