……離婚を裁判所に持ち込むことになった、と聞かされて、素羽はしばし呆然としてしまう。「後悔してるのか?」と清人が静かに問いかける。素羽はゆっくり首を振る。「いいえ。後悔なんて、していないわ」洋介はさらに続けて、「離婚の細かいことは、夏輝とちゃんと話し合ったほうがいいんじゃないか?」と促す。「分かった。話してみる」と素羽は小さくうなずく。できれば裁判なんて大ごとにはしたくない。静かに終わらせたい。それが素羽の本音だ。その日の仕事終わり、二人はレストランで待ち合わせる。夏輝がぽつりと言う。「あいつが本当に素羽と離婚したがっているとは思えない」法律家は心理学もかじっているから、そういう人の浅い思いは見抜いてしまうのだろう。素羽は淡々と答える。「彼の気持ちは、私には関係ない」素羽は決して、司野が離婚したくないのは自分を愛しているからだなんて、都合よく思い込んだりしない。彼が離婚を拒むのは、ただ家族、特に七恵を喜ばせたいだけなのだ。でも、自分はもう、そんな道具のような役割でいたくない。……倫子の「タイミング」と言っていた意味、素羽はその時にはまだ分からなかった。でも、一ヶ月後にはっきりする。祐佳が、妊娠したのだ。その知らせを聞いたとき、素羽の頭はまるで鉄拳で殴られたかのようにぐらぐらと揺れる。江原家の人は、すごい勢いで須藤家に乗り込む。相手は琴子だ。もし七恵から電話がなかったら、素羽は何も知らないままだった。倫子は愛想笑いを浮かべて言う。「琴子さん、素羽が須藤家に嫁いで何年も経つのに、孫を産んであげられなくて、本当に申し訳ないと思っているんだ。これでやっと、須藤家にも跡継ぎができた。祐佳が最初のひ孫を授かったんだ」満面の笑みの倫子に対して、琴子の顔は、まさに複雑そのものだ。「それ、本当に司野の子なの?」「もちろん。もう一ヶ月だよ」と倫子は微笑んで答える。祐佳は顔を真っ赤に染めて、はにかむ。素羽は、妹のまだ平らなお腹をじっと見つめる。その眩暈のような感覚に、足元が揺れる。「お義兄さん、お姉さんは子どもができない。でも、私は産める」祐佳は潤んだ目で司野を見つめる。その様子を見て、琴子は高血圧がぶり返したのか、呼吸が荒くなり、顔がどんどん青ざめていく。「奥様!」琴子は
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