All Chapters of 流産の日、夫は愛人の元へ: Chapter 451 - Chapter 452

452 Chapters

第451話

司野の顔は、失血のためすでに蒼白だったが、その言葉を聞いた瞬間、完全に血の気を失った。奥歯を強く噛み締め、静かに目を閉じる。やがて再び瞼を開いたとき、その瞳には滲む湿り気と、赤く浮き出た血走りが入り混じっていた。亘は彼の肩を軽く叩き、無言のまま慰める。――この状況で、「子供ならまた授かる」などという言葉は、口が裂けても言えない。そもそも、二人の関係に「次」があるかどうかさえ危ういのだから。司野は布団を跳ね除けると、亘の制止も振り切り、よろめく足取りで素羽のもとへ向かった。病室の前では、楓華が般若のような形相で立ち塞がっていた。もし人を殺しても罪に問われないのなら、素羽が手を下すまでもなく、彼女が真っ先にこの男へ「天罰」を下していただろう。ベッドに横たわる素羽は、先ほどまでの狂乱が嘘のように静まり返っていた。胸のかすかな上下がなければ、息絶えているのではないかと錯覚するほど、その存在は薄い。司野は震える手を伸ばし、痩せ細った頬に触れようとする。だが、指先が届く直前、楓華の鋭い平手がその手を弾き飛ばした。楓華は司野を突き飛ばし、二人の間に割って入ると、雛を守る親鳥のように彼を睨み据えた。そして、積もりに積もった怒りを言葉の刃へと変え、叩きつける。「触らないで!!」その声は、憎悪に震えていた。「素羽に、あなたの今さらの偽善なんていらないの!彼女があなたを必要としていたとき、あなたはどこで何をしていたのよ!」司野の蒼白な唇がかすかに動く。だが言葉は出てこない。胸を刺す罪悪感が、彼の声を奪っていた。楓華は目を真っ赤に腫らし、嘲りを含んだ声で吐き捨てる。「素羽が冷たい霊安室でおばあちゃんに付き添っていたとき、あなたは美宜とキャンドルランチを楽しんでいたんですってね!どれほど甘くて幸せな時間だったのかしら!」「……違う、そんなつもりじゃ……」司野はかろうじて弁明しようとする。それはただの送別の食事だったのだと。だが楓華にとって、その言い訳は汚物にも等しかった。「そんなに愛し合っているなら、どうして素羽に執着するの?自分が惨めなのは勝手だけど、なぜ彼女まで巻き込んで地獄に落とすのよ!知ってる!?素羽の人生は、あなたに壊されたのよ!好きでもないなら、どうして手放してあげなかったの!?彼女の意思なんて無
Read more

第452話

あの二人なんて、この先一生離れず、共倒れになればいいのよ。互いに地獄へと道連れにしてしまえばいいわ!「……出て行って!素羽はもうあなたと離婚したのよ。今の二人には、これっぽっちの関係もないわ!これ以上彼女に無理強いするつもりなら、こっちだって命がけでやり返す。みんなまとめて道連れにして、終わりにしてやるわよ!」楓華はそう言い放つと、司野の体を力任せに突き飛ばし、病室の外へと叩き出した。さらに、室内で呆然と立ち尽くしていた亘にも、鋭い声を向ける。「……あなたも、出て行って!」今の彼女を敵に回すのは得策ではないと悟り、亘は尻尾を巻くように大人しく部屋を後にした。扉が閉まると、楓華はベッドの上で傷だらけのまま横たわる素羽を見つめた。胸が締めつけられるような痛みに、思わず涙を拭う。それでも、無理やり気持ちを奮い立たせた。――しっかりしなきゃ。私が、この子を支えないと……病室の外では、司野が魂の抜けたように立ち尽くしていた。「子宮外妊娠」という言葉が、頭の中で何度も何度も反響している。楓華の言葉を、すべて否定したかった。自分と美宜の間には何もない。彼女を愛してなどいない。亡き友との約束を守るため、人一倍気にかけていただけだ。それ以上の意味など、なかったはずだ。亘は、抜け殻のようになった親友を見て、胸の内で深くため息をついた。何を言えばいい。何も言えやしない。ただ一つ言えるのは……自業自得だ、ということだけだ。この破滅的な状況は、すべて司野自身が招いた結果であり、誰のせいでもない。亘は彼を現実へ引き戻すように、低く告げた。「祖母の死は、素羽にとって一生解けない呪いになる。今のところ、美宜が関わっているという決定的な証拠はない。だがな……俺の知る限り、素羽は理由もなく発狂するような女じゃない」美宜を殺そうとするほど追い詰められていたのだ。あの女が潔白なはずがない。「この一大事に、もう二度と判断を誤るな。美宜であろうとなかろうと、拉致を実行した犯人を必ず引きずり出せ。そして、素羽のためにケジメをつけろ」その言葉を受け、ようやく司野の意識が一点に収束した。美宜が黒幕なら、容赦はしない。たとえ違ったとしても、芳枝を死に追いやった真犯人を必ず突き止め、相応の代償を払わせる。---死者は、決して戻らない。どれほ
Read more
PREV
1
...
414243444546
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status