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第115話

Auteur: 雨の若君
普通の人なら、義姉をそそのかして浮気させようなんて、絶対にしないだろう。

「私はあなたたちの争いに興味ないわ」

須藤家は、昔から平和とは程遠い。表向きは穏やかでも、内側は煙が立ちこめ、全員が腹に一物持っている。

「お前たち、ここで何してる?」

司野がやって来た。

翔太は背筋を伸ばし、逆光の中に立つ司野を振り返って見つめ、口元にうっすらと笑みを浮かべる。「別に、お義姉さんが一人で退屈そうだったから、ちょっと付き合ってただけさ。ちょうどお兄さんが来たし、僕の役目はこれで終わりだね」

司野のそばを通り過ぎる時、翔太はふと足を止め、その瞳に興味の色を浮かべて呟く。「お義姉さんって、ほんと面白い人だね」

声は小さいが、ちゃんと全員に聞こえるくらいの大きさだ。

「……」

やっぱりコイツ、どこかおかしい。

翔太が立ち去ると、司野の視線が鋭くなる。

「さっき、何を話してた?」

素羽は答える。「彼は、あなたのことが嫌いだって」

本当のことは、さすがに言えない。まさか「あなたのいとこが私に、あなたを裏切れって持ちかけてきた」なんて、言えるわけがない。

司野が信じるかどうか分からない。だが、素羽はどちらでも構わない。

「あいつには、近づくな」

翔太が司野を嫌っているのと同じくらい、司野も翔太を好まない。

家同士の争いを抜きにしても、幼いころから対立してきたいとこに、司野としてもいい感情はない。

素羽もその点は否定しない。「分かった」

どうせ近いうちに離婚するのだ。翔太に限らず、司野とも、二度と関わりたくない。

その後もしばらく宴の場に留まって、やっと帰ることになる。

素羽の足は、怪我が治ったばかりだというのに、一晩中ハイヒールを履いていたせいでふくらはぎが痛み、足首も赤く腫れていた。車を降りる時、急に足首に激痛が走り、バランスを崩して前のめりに倒れそうになる。

その瞬間、司野が素羽を抱きとめる。彼女は彼の腕に頼って体勢を立て直す。「ありがとう」

司野は目を伏せて、素羽の足元に視線を落とす。素羽が何か言う前に、突然、体が宙に浮く。司野に横抱きに持ち上げられる。

思わず彼の首にしがみついてしまい、体を安定させる。

「下ろして、自分で歩けるから」

こんな優しさ、別にいらない。

司野は強引だ。じろりと睨みつけて言う。「おとなしくしてろ」

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