琴子はこの日、美宜のために三件の見合いを用意していた。三人とも外見は悪くなかったが、とりわけ三番目の男性は、美宜に明らかな関心を示し、終始紳士的でありながら積極的な態度を崩さなかった。美宜もまた、愛らしい笑みを浮かべ、その好意を素直に受け止めている。かつて夫を慕い、自分から妻の座を奪おうとしていた恋敵の見合いに付き添う。美宜という存在を初めて知った頃の素羽には、夢にも想像できなかった光景だろう。だが、人は長く生きていれば、何が起きても不思議ではない。二人が楽しげに会話を弾ませているのを横目に、素羽は席を立ち、化粧室へ向かった。用を済ませて出ると、入れ替わるように美宜が後を追ってくる。素羽が落ち着いた手つきで手を洗っていると、美宜が唐突に切り出した。「誰が一番いいと思う?」素羽はハンカチで手を拭きながら答える。「司野ほどいい人なんて、そうそういないわよ」美宜は言葉に詰まった。素羽は口元に笑みを浮かべた。「冗談よ。そんな顔しないで。結婚するのはあなたなんだから、私が見ただけで善し悪しなんて決められないわ。一緒に過ごしてみなきゃ分からないでしょう?」美宜は小さく頷いた。「分かった。あなたの言う通りにする。堀井学(ほりい まなぶ)さんと付き合ってみるわ」堀井学――三番目の見合い相手の名だった。化粧室を出ると、美宜は自ら進んで学を素羽に紹介した。「こちらが江原素羽さんです。素羽さん、この方が堀井学さん」学は礼儀正しく頭を下げた。「素羽さん、はじめまして。学と呼んでください」素羽も軽く頷く。「はじめまして」挨拶を終えると、彼女は身を引こうとした。「じゃあ、お二人でゆっくり――」「まだ行かないで」美宜が引き留めた。「司野さんにも連絡したの。ちょうどいいし、みんなでランチでもどう?」素羽の目元がわずかに動いたが、拒むことはしなかった。もちろん、学に断る理由もない。レストランに到着して間もなく、司野が姿を現した。「司野さん、こっちだよ」美宜が先に手を振る。学も立ち上がった。「須藤さん。はじめまして」ただ一人、素羽だけが椅子に座ったまま動かなかった。挨拶を交わすと、司野は二人に着席を促し、そのまま自然な動作で素羽の隣に腰を下ろす。注文の際に
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