「お断りします!」三智子は食い気味に、にべもなく拒絶した。美宜の瞳が険しく沈み、低い声で威圧する。「……断るなら、あなたのこと、全部ぶちまけてもいいのよ」「ご勝手にどうぞ」その一言で、個室の空気は一瞬にして張り詰めた。支配しようとする者と、抗おうとする者。三智子は真正面から言い放つ。「私は、あなたの手の中で振り回される道具じゃありません。一つの要求には応じると言いましたが、二つ目に従うつもりはありませんわ。自分の手を直接血で汚すような真似もしません。本当に暴露するとおっしゃるのなら、私だって自暴自棄になって、あなたが私に何をさせようとしたのか、すべて須藤さんに話して差し上げます」その言葉に、美宜の瞳が鋭く据わる。そこには明確な殺意が宿っていた。「……私を脅すつもり?」美宜はその殺気を隠そうともせず、三智子もまた、それをはっきりと見て取っていた。「脅しているのではなく、断っているだけです」そもそも、素羽を死へと誘導する話自体、気が進まなかった。ましてや、今度は直接手を下せという。三智子が首を縦に振るはずもない。自分は狂ってなどいない。港町のクルーザーで目にした惨状が、命の重さを骨身に刻み込んでいる。美宜側も、司野側も、これ以上刺激したくはない。今の自分にできることは――ただ身を潜め、やり過ごすことだけだった。三智子は静かに釘を刺す。「須藤さんは、素羽さんのお腹の子をとても大切に思っていらっしゃいます。その子に手を出す前に、もし発覚した場合、彼の怒りに耐えられるかどうか……よく考えた方がいいですよ」美宜の瞳に、隠しきれない苛立ちが走った。三智子までもが、自分が司野に軽んじられていると嘲笑っているように感じたからだ。「何様のつもりよ!あなたなんかに指図される覚えはないわ!」――司野さんは、今ちょっと機嫌を損ねているだけ。あいつら、本気で素羽の立場が私より上だとでも思っているの!?三智子はその激昂を柳に風と受け流し、淡々と告げる。「……私は、事実を申し上げているだけです」二人の間にどれほどの因縁があるのかは知らない。だが、まだ形すら成していない胎児に手をかけようとするなど、正気の沙汰とは思えなかった。「黙りなさい!」――司野が素羽を気にかけている?そんな話、これ以上聞
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