素羽の言った通り、美宜という災厄の種は、無駄に命がしぶとかった。何度も手術室を出入りしたにもかかわらず、結局は生還してみせたのだ。その異常な生命力は、もはや鋼鉄の肉体と呼んでも差し支えないほどだった。もっとも、素羽としても、むしろあいつには死んでほしくなかった。死ぬことなど一瞬で終わる。だが、生かされたまま苦しみ続けることこそ、この世で最も残酷な地獄なのだから。美宜を狂うほど苛立たせていたのは、自分が本当に素羽に何一つ手出しできないという現実だった。あの精神疾患の診断書こそが、素羽にとって最強の盾だったのである。淳子は、両脚を失った娘の姿を見た瞬間、あまりの衝撃に耐えきれず、その場で白目を剥いて倒れ込んだ。再び意識を取り戻した時には、この世の終わりのように泣き崩れていた。淳子は司野を責め立てるように叫ぶ。「素羽があんなことをしたのよ!?美宜ちゃんをこんな姿にしたのに、あなたは何の罰も与えないつもりなの!?」司野は答えず、逆に問い返した。「どうしろって言うんだ?」「計画的な殺人よ!刑務所に入れるべきだわ!」司野は淡々と言い放つ。「あんたの娘は人を殺しておきながら刑務所から出てきたじゃないか。それに、美宜は死んでいない。今も生きてるだろ。どこが殺人なんだ?」淳子は顔色を変え、言葉に詰まった。「美宜がこんな目に遭ったのは、あなたにも責任があるでしょう!?それなのに、全部見捨てるつもりなの!?」「どうして俺がそいつの面倒を見なきゃならない?」司野は顔を巡らせ、病床の美宜へ視線を向けた。「美宜、お前を刑務所から出してやった。それで取引は成立してる。俺は損な商売はしない人間だ。これ以上、俺から得をしようなんて考えるな」そう警告した上で、さらに低い声で告げる。「二日やる。千尋の居場所を話すか、それとも刑務所へ戻るか。好きな方を選べ」美宜の胸が激しく上下した。「私を助けないなら、千尋だって死ぬわよ!」司野は片手をポケットに突っ込み、冷え切った声で返した。「死ぬ覚悟があるなら、それも千尋の運命だろう。安心しろ。お前が死んだら、遺骨くらいは責任持って全部撒いてやる」その言葉に、美宜は絶句し、顔を真っ赤に腫らした。司野は、自分がこれまで考え違いをしていたことを理解していた。
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