自分は間違っていただけではない。取り返しのつかない、致命的な過ちを犯したのだ。素羽を――自分の妻を、失ってしまった……胸が張り裂けそうな痛みに息が詰まり、司野はその場に崩れ落ちた。突然、視界が真っ白に染まる。白い霧の向こうに、見慣れた美しい人影が浮かび上がった。彼は必死に手を伸ばし、叫ぶ。「素羽……素羽……」---亘は、自分の言葉が司野をそこまで追い詰め、気を失わせたことなど知る由もなかった。景苑の邸宅を後にすると、その足で楓華の家へ向かった。素羽の死に苦しんでいるのは、司野だけではない。楓華もまた、彼に劣らぬほど深い悲しみに沈んでいた。楓華があまりにも痛ましかった。だからこそ亘は、わざわざ司野のもとへ赴き、あれほど厳しい言葉を浴びせたのだ。司野の独善的で傲慢な振る舞いが、素羽の悲劇を招き、楓華まで深く傷つけた。その尻拭いを、結局は周囲の人間がすることになったのだ。寝室のベッドでは、両目を真っ赤に腫らし、悲しみに暮れる楓華が横たわっている。そんな彼女を見つめる亘の瞳には、いたわりと痛ましさが滲んでいた。以前は、自分は口が達者な人間だと思っていた。だが今は、自分がひどく不器用に思えた。慰めの言葉ひとつ、口にすることができない。どれほど言葉を尽くしたところで、素羽の死が楓華にもたらした深い悲しみを消すことなどできないからだ。亘はベッドへ腰を下ろし、彼女をそっと腕の中へ抱き寄せた。そして何も言わず、ただ静かに寄り添い続けた。---月日は矢のように流れ、あっという間に五年が過ぎた。空港の駐車場。「社長、ご自宅までお送りいたしましょうか」岩治はバックミラー越しに、無表情な司野を見た。司野は膝の上のノートパソコンから視線を上げることもなく、淡々と言った。「いや、会社へ行け」岩治の目に一瞬、心配の色が浮かぶ。「社長、もう二日間まともにお休みになっておりません。一度ご自宅へお戻りになって、少しお休みになってから会社へ向かわれてはいかがでしょうか」まだ三十五歳だというのに、こめかみには白いものが目立ち始めている。そんな司野の姿を見るたび、岩治の胸には複雑な思いが去来した。この五年間、司野はまるで体温も感情も失ったロボットのような人間へと変わっていった
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