仮眠用ベッドの上、灯火の輪郭がふたりの影を寄せ合っていた。薫は、仰向けのままゆっくりと瞼を下ろす。唇は微かに開き、首筋には汗がにじんでいる。胸元にはまだシャツが残っているが、布地の間から体温と呼吸がこぼれていく。礼司は、その閉じられた目元をじっと見つめていた。指先は薫の頬に触れたまま、肌の下に流れる微細な震えを感じとる。薫の顔が光に溶け、ほとんど夢のように曖昧になる。耳の奥に自分の鼓動が大きく響いているのを、礼司は痛いほど意識した。ほんの短い間、ふたりの間に再び沈黙が落ちる。だがその沈黙は、もう以前のような戸惑いや躊躇ではなかった。緊張の底に、何かが生まれようとしていた。薫が小さく息を吸い、目を閉じたまま、声にならない声を零す。その表情が「受け入れる」という意志で満たされていることを、礼司ははっきりと悟る。ためらいが、消えていく。礼司は薫の頬に唇を近づけ、そしてゆっくりと口づけた。最初の触れ合いはごく浅く、重なった唇から熱が流れ込む。薫の身体が小さく震える。その震えは、拒絶でも恐れでもない。まるで「解けていく」ような、そんな柔らかさだった。礼司は、もう一度薫に唇を重ねる。今度は少しだけ強く、そして長く。薫の唇がわずかに開き、呼吸が漏れる。夜の静けさのなかで、その音がはっきりと耳に届いた。唇を離すと、薫の瞼はまだ閉じられている。礼司はゆっくりと薫の髪を撫で、首筋に手をすべらせる。喉の下、鎖骨のくぼみ、胸元へと指先が動くたび、薫の体はわずかに反応する。肩のあたりでシャツの布地に指がかかり、礼司は、そっとその第一ボタンを外した。布のあいだから、薫の素肌が淡い灯りに浮かぶ。ふたりの吐息が、熱く絡み合う。薫の右手が、無意識のうちに礼司の背中へまわされる。シャツ越しに感じるその手のひらの熱が、礼司の身体の芯まで伝わる。「……礼司さん」薫は目を閉じたまま、小さく名前を呼ぶ。その声が、礼司の内側に、なにか新しい扉を開ける。礼司は薫の首筋に唇を這わせる。皮膚の上を唇が
Last Updated : 2025-09-24 Read more