死者蘇生の実現は容易ではなかった。 アース神族は生来、バナジスライトを脳に宿す能力者である。バナジスライトは天然のフォトニック結晶体。それも多くが深淵領域化した、非常に質の高いものだった。 光を制御するバナジスライトは、万能のエネルギー源にも超巨大容量の記録媒体にもなる。 オーディンらは死んだ同胞のバナジスライトを保管して、死者本人の肉体と精神活動の全てを記録した。 その情報量は莫大。いかに高品質のバナジスライトとはいえ、記憶そのものと記録・保管に伴うエネルギーの捻出を同時にこなすのは難しかった。 そこでオーディンは、エネルギー源を他に求めた。 この星には未熟ながらも生命体が数多く存在していて、中でも人類は比較的、アース神族と似た構造の生き物だった。 いくつかの実験を経て、彼らにユミル・ウィルスを感染させると、低確率・低品質ながらもバナジスライトが生成されると判明した。 また人間以外の動物も、さらに低質だがバナジスライトを生む。 ユミル・ウィルスの感染は、抗体を持たないこの星の生き物に不治の病として現れたが、オーディンは気にしなかった。 どうせ病状が末期に達する頃には、バナジスライトを『収穫』するのだから。 こうして研究を進める環境は揃った。 エネルギー供給源であるこの星の生き物たちは、オーディンにとっては養豚場の豚のようなもの。 ほどほどの文明を与えて数を増やして、エインヘリヤルの仕組みを作った。効率的に『収穫』するためだ。 さらに宇宙船の技術を転用してユグドラシルを作り、自らを神格化して絶対的に人類を支配した。 けれど肝心の死者蘇生はなかなか成功しなかった。 フレイの妹フレイヤを被験体とした実験では、極めて不完全な形での蘇生になってしまった。 ホムンクルスを肉体のベースにした所、意思を持たない人形が出来上がってしまったのである。 フレイはフレイヤのバナジスライトから記憶と行動パターンをコピーして、ホムンクルスの脳にインストールしたが、それでも上手くいかなかった。簡易的なプログラム程度の判断力、行動力しか持たなかったのだ。能力も
Dernière mise à jour : 2025-10-23 Read More