島田先生は、今回の入院での主治医だ。真琴の状態については、その都度、彼から信行へと伝えられていた。ふわりと鼻をついた、信行の体からの消毒液の匂い。だから、真琴はあえて探りを入れた。先生に呼び出されて、病院へ行っていたのではないか、と。信行は上着を脱ぎながら、事も無げに答えた。「昨日、島田先生と電話で話したんだ。お前の様子を伝えたら、来週、一度診てもらいに来るようにって」「そう……」脱ぎ捨てられた上着を受け取り、真琴は落ち着いた声で言った。「消毒液の匂いがしたから。先生に呼ばれて病院へ行ったのかと思ったわ」その言葉に、信行の目が一瞬泳いだ。けれど、すぐにはぐらかすように笑った。「いや、先生に呼ばれたわけじゃない。入院している友人がいてね、帰る前に少し顔を出してきたんだ」「そうなのね」真琴は脱ぎたての衣服を抱え、微笑んだ。「分かったわ。それじゃ、早くお風呂に入ってきて。ゆっくり休まないと」さらに、こう付け加える。「江藤さんたちに、夜食でも用意させようか?」信行は身を乗り出して真琴の頬に口づけし、穏やかに答えた。「向こうで食べてきたから、大丈夫だよ」「ええ」真琴は頷き、彼が洗面所へと入っていくのを見送った。ドアが閉まるのを見届けてから、脱ぎ散らかされた服をハンガーに掛けた。明日、使用人たちが洗いやすいように。寝室に戻ると、真琴はスマホを手に机の前に座った。まだ会社には出ていないが、家でプロジェクトの進み具合を確かめるなど、少しずつ仕事に戻り始めていた。スマホを開き、何気なく流し見ていると、由美が新しい投稿を上げていた。【早く良くなりますように】添えられた写真は、どこかの病室の風景だ。さっき信行が言っていた「入院している友人」という言葉が頭をよぎる。間違いなく、由美のことだろう。画面をじっと見つめたまま、真琴はすぐに決めつけることはしなかった。一度画面を閉じ、一明に電話をかける。「先輩、前に言っていた解析用のプラグイン、今すぐ送ってもらえますか?ちょっと確かめたいデータがあって」電話の向こうで、一明はすぐ答えた。「いいよ、今送る」ほどなくして、頼んでいたツールが手元に届く。真琴は届いたプラグインを使い、信行の車載アプリのパスワードを解析した。そして、そ
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