拓真は信行の言葉を遮るように言い放った。「なぁ、考えたことはないか?真琴ちゃんはお前と別れた方が、ずっと幸せになれるんじゃないかって。興衆実業を出てアークライトに移ってから、真琴ちゃんはもう十分に自分の力を証明してみせただろ。特許をきっちり金にする手腕も、現場を回す力も、エンジニアとしての腕も本物だ……上の連中や専門家がこぞって真琴ちゃんを高く買うのも分かるよ。真琴ちゃんはまだ、二十四にもなってないんだからな。真琴ちゃんの伸びしろは底知れない。仕事に打ち込めば、将来成し遂げることは俺やお前なんかとは比べものにならないスケールになる。社会に尽くせる力だって、俺たちとは次元が違うんだ」「真琴は別れた方が幸せになる」――その容赦ない指摘に、信行はただ冷え切った視線を拓真に向けるしかなかった。視線を絡ませたまま、拓真は畳み掛ける。「事実だってことは、お前が一番よく分かっているはずだ。真琴ちゃんの頭脳がどれほどズバ抜けているか、お前が知らないはずないだろ」信行は感情の読めない瞳をそらし、吸いかけの煙草を灰皿に揉み消した。それでもやはり、手放したくはなかった。煙草を押し付けた右手を引いたその時、スーツの内ポケットでスマホが震えた。気だるげに取り出し画面を見ると、舞子からの着信だった。何事もないように通話ボタンを押し、「もしもし」と応じる。だが次の瞬間、受話器から漏れた舞子の悲鳴が、信行の鼓膜を突き刺した。「信行様!火事です、家が火事なんです!」信行が状況を飲み込む間もなく、慌てふためいた声が続く。「私たちが寝ている間に、突然火の手が上がって……真琴様が、真琴様がまだお一人で二階に!」その言葉を聞いた瞬間、信行の心臓が止まった。通話を叩き切るや否や、車のキーを鷲掴みにしてソファから跳ね起きた。拓真も弾かれたように立ち上がる。「どうした!?」信行は顔面を蒼白に引きつらせ、大股で出口へと向かいながら叫んだ。「江藤さんからだ。家が火事だって」走りながら119番へ発信し、住所を叫ぶ。オペレーターの返答は簡潔だった。「その場所なら、すでに通報が入っています。今、消防隊が向かっています」信行の背を追いながら、拓真も焦燥を隠せずに眉をひそめた。「この天気で、なんで急に火事なんかに……」拓真が
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