そこはただのレストランではなかった。最近、若い未婚女性たちの間で熱狂的なブームを巻き起こしている『マッスル・ショー・ダイニング』だったのだ。「えへへ、ただご飯食べるだけじゃつまんないっしょ?」ミキは悪戯っぽく笑い、唖然とする詩織を無理やりVIP席に座らせた。開演を待つ間、コース料理が次々と運ばれてくる。ミキは嬉々としてスマホを取り出し、あちこち写真を撮り始めた。やがてショーが始まり、演者たちがステージに登場すると、客席のボルテージは一気に跳ね上がった。当初、詩織はこの手のショーの『真の恐ろしさ』を理解していなかった。だが次の瞬間――ステージ上のイケメンパフォーマーたちが、バッとジャケットを脱ぎ捨て、鍛え抜かれた見事な上半身をこれ見よがしに曝け出したのだ。途端に、店内のあちこちから割れんばかりの黄色い歓声が上がった。客たちが「食事」目当てでここに来たわけではないことは、火を見るよりも明らかだった。ミキは興奮気味に何枚も激写していたが、ステージ上の男たちが腰に巻いていたヒラヒラとしたロングスカートをバサッと脱ぎ捨てた瞬間、本気で落胆したような声を上げた。「はあ!? なんで下にまだ白いロングインナーなんか穿いてんのよ!」「…………」詩織は呆れて言葉を失った。じゃあ何?丸出しにしろとでも言うの?ひとしきり撮りまくった後、ミキはその動画をあちこちにシェアし始めた。そして、わざとうっかりを装って、あるグループチャットにもそのマッチョ動画を連投する。言い忘れていたが、このグループチャットは今日作られたばかりだった。メンバーはミキ、詩織、密、そして……柊也の四人のみ。『詩織の臨時アシスタントになったから、業務連絡は直接ここに送って』という名目でミキが強引に立ち上げたものだ。とんでもない修羅場と化したそのトークルームで、密は相変わらず震え上がっており、句読点一つすら打てずにいる。ミキが十個目の「筋肉アピール動画」を送信した直後、画面に一件のシステムメッセージがポンと表示された。【賀来柊也がグループを退出しました】ミキはご満悦な笑みを浮かべ、スマホをしまった。ざまぁみろ。いい気味だわ!一方その頃。ミキの執拗な嫌がらせによってフラストレーションが限界に達していた柊也は、太一を呼び出してヤケ酒をあお
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