胸元に顔を押し当てたまま、詩織は肌越しにその感情の揺れをはっきりと感じ取っていた。「あらゆる手を使って道を作り、お前が傷つかないよう徹底的に鍛え上げた……だが、一つだけ想定外だった。お前が俺のために、海外留学のチャンスを諦めるとは思わなかったんだ」その事実を知ったのは、かつて志帆の身辺を洗った時のことだ。当時は、ただ恩を返すために残ってくれたのだと思っていた。それでもやはり、自分のせいで可能性を奪ってしまったことに深い後悔を抱えていた。詩織は少し顔を上げ、尋ねた。「もし私が留学を諦めずに、そのまま海外へ行ってたらどうなってたの?」答えはすぐには返ってこなかった。優しさと愛おしさに満ちていたはずの瞳が、薄闇の中で少しずつ暗く沈んでいく。その沈黙に呼応するように、寝室の空気が凍てつくほど冷たく変わった。やがて、一切の温度を失った低い声が響く。「それなら、あんなに時間をかけて裏で手を回したりはしなかった」「あいつら全員を道連れにして、一緒に消えていたさ」ふわりと吐き出された言葉だが、その重さは尋常ではなかった。ためらいや損得勘定の欠片も、一瞬の迷いすらもない。瞳の奥に一瞬だけ閃いた底知れぬ狂気と殺意に触れ、詩織は思わず身震いをした。柊也は首筋に深く顔を埋めた。重く熱い吐息が肌を打つ。「……だが、お前は残ってくれた」「一緒に過ごす一分一秒が惜しくなって、絶対に手放したくなくなった。そして何度も考えたんだ。俺が全員を地獄へ引きずり込んで消えたら、残されたお前はどうなるんだってな」母・初恵への骨髄提供を求めて、親族の家の前で一晩中土下座をしたにもかかわらず冷酷に追い払われ、絶望した顔で病院へ戻ってきたあの姿が、柊也の脳裏には今も焼き付いている。もしまたあんな理不尽な困難に襲われた時、誰の手も借りられなかったらどうするのか。だから、どんな嵐が吹き荒れても跳ね返せるだけの絶対的な力を身につけさせたかった。そのために、柊也は計画を変えた。持ちうる手駒をすべて使い、一歩も間違えられない危ない橋を慎重に渡り続けた。すべては、詩織が一人で立てるだけの力を手にする時間を稼ぐためだ。たくましく成長した姿を見届けるその日が、自分が刑務所に入り、その手を離す日になることなど、当時の詩織は知る由もなかった。だが今
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