ついに我慢できなくなった悠人が、勢いよく席を立った。「どういう意味だ!?あんたがログインできるって、まさか……」志帆の唇から血の気が引いていく。スマホを握りしめる指先が白くなるほど力が入り、鼓動の音が耳元でうるさいほどに鳴り響いていた。……おかしい。こんな偶然、あるはずがない……!ウィリアムは言っていた。原作者と鉢合わせる確率は三千万分の一だと。だからこそ、彼が横流ししてくれた十数本のストックの中から、一番出来の良いこの論文を選んだのだ。詩織に勝ち、高村教授とのコネクションを手に入れ、その背後にある莫大なリソースを我が物にするために。今までずっと、このやり方でうまくやってきた。一度だって失敗したことはなかったのに。どうして、今回に限って?混乱の極みにある志帆をよそに、部屋中の視線は詩織の指先に釘付けになっていた。彼女は高村教授からノートPCを借りると、慣れた手つきで古いメールボックスを開く。そして、例の送信済みメールを表示させた。スクリーンに映し出されたのは、志帆が提示した画像のオリジナル版。だが、志帆の出した曖昧なスクリーンショットとは違い、そこには送信日時からヘッダー情報に至るまで、すべてが詳細に記されていた。それだけではない。詩織は受信トレイに戻ると、未読のまま放置されていた『WTビジネススクール』からの膨大なメールを次々と開いて見せた。『なぜ入学手続きに来ないのですか?』『連絡がつかないのですが、どうか返信を』『ブラックボックス投資理論について、さらに詳細な資料を求む』メールの日付が進むにつれ、内容はより必死さを帯びていく。入学すれば専用の栄誉プログラムを用意する。全額奨学金も保証する。そして最後のメールには、こう記されていた。『当校は、貴女のために学籍を永久に保留します。気が向いたらいつでも連絡をください』その画面を見た瞬間、室内の空気が完全に変わった。これらのメールは、詩織自身にとっても初見だった。あの日——留学を諦めると決めたあの日から、このアカウントには一度も触れていなかったからだ。親友のミキからは「あんたは一度決めたらテコでも動かない」と呆れられたものだが、まさか数年越しにこの扉を開ける日が来るとは。すべての操作はプロジェクターに投影され、衆
Read more