時生は、冷えた表情のまま一瞬だけ驚いたような顔を見せた。その直後、眉のあたりにかすかな不機嫌さがにじむ。見れば分かる。彼は我慢しているのだ。きっと、あの頃を思い出したのだろう。私が彼にないがしろにされ続けていた日々。私が贈ったものは、どれもまともに大事にされなかったこと。だから、彼のほうが後ろめたい。私に怒る資格なんてない。しばらく沈黙したあと、時生は淡々と言った。「これからは、俺の物を勝手に処分しないでくれ。お前がくれたものなんだから、もう俺の物だ」「……わかった」心はまったく揺れなかった。そう言われたから、ただ頷いただけ。正直、かなり投げやりな返事だった。けれど次の言葉は、完全に予想外だ。「もう一度、マフラーを編んでくれないか。今度はちゃんと使うから」……よく、そんな厚かましいことが言えるな、と思った。「もう編み方、忘れちゃった。何年もやってないし」言い方は柔らかくしたけれど、断っているのは明らかだ。時生はプライドの高い人だ。さっきの流れなら、私が折れてくると思っていたのだろう。しかし、私はそうしなかった。だから彼も、それ以上は言わなかった。「特に用がないなら、もう部屋に戻るね」そう言うと、彼が私を呼び止めた。声は低く、抑えた調子だった。「昭乃……あと、どれくらい時間がかかる?」一瞬、意味がわからず、彼を見る。時生は続けた。「はっきり言うよ。あとどれくらいで、俺たちは昔みたいに戻れる?」――昔みたいに?また、彼に寄りかかって生きるだけの存在に戻れと?都合よく弄ばれて、騙されていた、あの頃に?私が黙っていると、彼は両手でそっと私の肩を押さえた。「昭乃、まだ怒ってるのはわかってる。でも、気持ちの整理がついたら……また昔みたいに戻ろう。な?俺は、前の昭乃が好きなんだ」深くて黒い、その瞳を見つめながら、思う。――どうしたら伝わるんだろう。昔の昭乃は、もう戻らないって。「……わかった」本心とは裏腹の返事だった。かつて彼が私にしていたのと同じように、ただ、その場をやり過ごすための言葉。……今夜さえ乗り切れば、それで終わりだと思っていた。けれど、それから数日。彼は意図的なのか無意識なのか、何かにつけて私に用事を言いつけてきた。まるで、私が昔みたいに、彼の態度に関
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