私はその場に立ち尽くしたまま、考えるより先に、口だけが動いた。「……私が行かなかったら、そばに残ってくれる?」時生はほんの少し黙り込み、短く返した。「気をつけて」そう言って、彼は振り返り、ヘリコプターのある場所へ歩いていった。私はふっと力を抜いて笑った。最初からわかっていた選択だったじゃない。その瞬間、また警報が鳴り響いた。「さっきは余震は夜にくると言っていたのに、どうして今なのか」周囲ではざわざわとそんな声が上がっていた。私はあたりを見回したけれど、理沙の姿は見えない。あちらは無事だろうか。そのとき、ふと自分のノートパソコンのことを思い出した。基地に置いたままだ。ここ数日で撮影した映像や写真、すべてが入っている。私はわずかな期待にすがり、避難所へと走った。どうしてもパソコンを取り戻したかった。しかし、余震は、想像以上に早く、そして激しく襲ってきた。わずかに残っていた建物でさえ、激しく揺れ始める。轟音とともに避難所の天井が崩れ落ちた瞬間、私は生まれて初めて、死がこんなにも近くにあると感じた。パソコンを手にした直後、外へ逃げる間もなく、目の前で梁がそのまま落ちてきた。次の瞬間、私は梁と地面のわずかな隙間に閉じ込められていた。幸い、床に段差があったおかげで、その小さな空間だけは一時的に安全だ。梁はそこで止まり、それ以上は落ちてこない。しかし余震はまだ続いている。周囲からさらに瓦礫が落ちてきたら、この梁も長くはもたない。頭の中にあるのは、ただ一つ。――私は死ねない。もし私が死んだら、母は一生、結城家に縋って生きることになる。そんな責任を、どうして他人に背負わせられる?狭い空間で、体も腕もほとんど動かせない。必死に探って、ようやくポケットの中のスマホに触れた。手を目の前まで持ち上げられず、画面は見えない。指紋でロックを解除し、感覚だけを頼りに電話をかける。落ち着け、と自分に言い聞かせたけれど、頭の中はぐちゃぐちゃだ。仮に電話がつながったとして、どうなるというのだろう。こんな状況で、危険だらけの被災地に助けに来てくれる人なんて……数回の呼び出し音のあと、電話がつながった。「……もしもし」自分でもわからない。私と時生は、いったいどんな因縁で結ばれているのだろう。暗闇の中で適当
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