しかし、正修の姿を目にした瞬間、君江の笑顔はすぐに消え、きりっとした真面目な表情に戻った。二人の前まで歩み寄り、挨拶する。「奈穂ちゃん、九条社長、おはようございます」「おはようございます、須藤さん」正修は礼儀正しくうなずいた。実のところ、君江は今、正修にとても感謝している。奈穂と正修の仲直りに、ほんの少し手助けした――ただそれだけの理由で、ここ数日、彼は自分に三つもの大型プロジェクトを振ってくれたのだ。表向きは須藤グループへの案件だが、正修ははっきりとこう条件を付けた。――この三案件は、すべて君江が単独で責任者を務めること。そして他の人間が関わる場合は、必ず君江の許可を取ること。つまり、進が自分の二人の婚外子を無理やりねじ込む可能性は、完全に断たれた。君江にとっては、まさに思いがけない幸運だった。この三つを成功させれば、会社での発言力は確実に大きくなる。とはいえ――感謝は感謝。でも、正修が怖いのは、また別の話だった。彼の前に立つと、いまだにどうしても……少し背筋が寒くなる。君江は奈穂の隣に並び、ひとつ大きなあくびをした。「今朝ちょっと寝坊しちゃって。でも間に合ってよかった。まだ発表会、始まってないよね?」「まだよ」奈穂は君江の手を軽く握る。「行こう、一緒に入ろう」「うん!」今日の発表会で起こるかもしれない「何か」を思うと、君江はやけに胸が高鳴った。三人が会場入口に着くと、北斗のボディガードたちは奈穂の姿を見た途端、すぐに道を開けた。北斗から、あらかじめ指示が出ていたのだ。――奈穂が来たら、即座に中へ通せ。それに同行者も止めるな。正修が一緒に来る可能性が高いことも分かっている。そして、止めたところでどうにもならないことも。だったら――自分がどれほど愛情深い告白をするか、見せつけてやればいい。そして、かつて自分と奈穂が過ごしたあの五年間が、どれほど幸せだったかを、正修に思い知らせてやる。奈穂が会場に入った瞬間、北斗は彼女を見つけた。正修が隣にいることなど気にせず、北斗は迷いなく歩み寄る。「奈穂……」その言葉を口にした瞬間、全身にぞくりと悪寒が走った。その冷気の出所がどこか、北斗には痛いほど分かっている。だからこそ、必死に視線を横へ向けないようにした。「
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