――奈穂の姿を目にするまで。その瞬間、まるで一本の命綱を見つけたような気がした。奈穂の家柄が立派だから、というわけではない。ただ、栞には分かるのだ。奈穂は自分よりも強くて、そしてずっと勇敢な人だと。もしかしたら――この人から、少し勇気をもらえるかもしれない。あの年の出来事を、すべて打ち明ける勇気を。栞がその話をしたがっていることを、奈穂はすぐに察した。もし自分が栞だったら、きっと同じように、当時の真実を世に明らかにしたいと思うはずだから。「分かった」奈穂はうなずいた。「怖がらなくていい。この件は、私が森下さんを助ける」水紀の悪行は、必ず暴かれるべきだ。「ありがとうございます、水戸さん……本当に、ありがとうございます……」栞は何度も頭を下げた。泣き腫らした目はひどく赤く腫れていたが、それでも口元にはかすかな笑みが浮かんでいる。何年も積み重なった傷が、そう簡単に癒えるはずもない。それでも今、栞の胸はこれまでにないほど軽くなっていた。奈穂はしばらく栞と話し、部下に家まで送らせた。そして自分は一人、カフェに残ってぼんやりと座ったまま動けずにいた。しばらくして、向かいの席に誰かが腰を下ろす気配がする。顔を上げると、正修が目の前に座っていた。その瞳には、気遣いと心配の色がにじんでいる。「奈穂」彼は手を伸ばし、そっと彼女の手を握った。「大丈夫か?」「うん、平気」奈穂は首を横に振る。「ただ……どうしてもっと早く、北斗と水紀の本性に気づけなかったんだろうって、少し悔しくて」以前、水紀が栞をいじめていた件は一度暴露された。けれど、すぐに揉み消された。誰が裏で手を回したのか。考えるまでもない。北斗だ。交通事故の件を処理したのと同じように、あの時も水紀のためにすべて片づけたのだろう。本当に、胸が悪くなるような二人だ。「考えすぎるな」正修はやさしくなだめる。「今からでも遅くない。それに、すぐにあいつらは相応の報いを受ける」「……うん」奈穂は小さくうなずいた。「当時、水紀が森下さんをいじめていた動画……見つかった?」正修は少しためらい、すぐには答えなかった。たしかに北斗は当時、情報をすべて削除させ、事件を完全に隠蔽した。だが、正修が本気になれば、見つけられないものはない。ただ――その動画の内
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