白い車が空港の入り口で待っていた。奈穂は一目でそれが水戸家の車だと分かった。白い手袋をはめた運転手が車のそばに立っており、彼女を見ると、恭しく「お嬢様」と声をかけた。そして彼女の手からスーツケースを受け取り、彼女のために車のドアを開けた。奈穂は腰をかがめて車に乗り込もうとしたが、車内にいる人物を見て、一瞬固まった。「お父さん……」車内には中年男性が座っており、彼は頭を下げて書類を読んでいた。何も話していなくても、威厳のある雰囲気が漂っていた。普段、電話やビデオ通話では彼と口論することもあった奈穂だが、今ではまるで小さな雛鳥のようにおとなしくなり、おずおずと車に乗り込むと、こっそり父親を一瞥した。健司はまだ書類を読んでおり、彼女に話しかけるつもりはないようだった。彼が自ら空港まで迎えに来るとは聞いていなかったので、奈穂は心の準備が全くできていなかった。家に帰ってから会うものだと思っていたのだ。いきなり目の前に現れたので、奈穂は少し後ろめたい気持ちになった。何しろこの数年間、彼女はろくでもない男のために、ずっと父親と揉めていたのだから。運転手は奈穂の荷物を車に積み込むと、運転席に座り、黙って水戸家へと車を走らせた。車内は奇妙な静寂に包まれた。奈穂は時々こっそり健司を見た。数年経っても、健司は一見何も変わっていないように見えるが、よく見ると、頭の白髪が少し増えているようだった。――口には出さないが、彼の心の中では、自分のことでずっと心配していたのだろう。奈穂の目が、突然赤くなった。彼女は後悔の念に駆られた。しかし、今となっては後悔しても仕方ない。彼女ができることは、これからずっと父親と祖母のそばにいて、この数年間の空白を埋めることだけだ。しばらくして、健司は書類を閉じ、ようやく口を開いた。「道中、順調だったか?」奈穂はひよこのようにうなずいた。「うん」健司はもともと彼女を叱りつけようと思っていたが、彼女のこの様子を見て、心は一瞬で和らいだ。「本当、バカな娘だ」彼は手を伸ばし、彼女の頭をなでた。奈穂の目からは、一気に涙があふれそうになった。彼女は、子供の頃、何か問題を起こすたびに、父親がこうして怒ったふりをして、最後には折れてくれたことを思い出した。「お父さん
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