「秦社長はどちらに?」若菜は無理に体を起こし、ベッドの上で身を支えながら尋ねた。「彼に会いたい……」「慌てないでください。急に起き上がるとめまいを起こします。主治医からも、今は安静になさるのが一番だと言われております。社長はまだいらっしゃいますので、お会いになるかどうか聞いてまいります」女が部屋を出ていくと、若菜はベッドにもたれたまま、抑えきれない笑みを浮かべた。これほど長い間、烈生に想いを寄せてきた。そして今、ようやく彼に少し近づけたのだ。いや、少しどころではない。だって今の自分は、すでに彼の屋敷の中にいるのだから。そんなことは、以前の自分には望むことすらできなかった。これでようやく、自分を守ってくれる人ができた。喜びに浸っていたその時、不意に脳裏に浮かんだのは雲翔の姿だった。高揚していた気持ちが、一瞬で冷え込んだ。雲翔……もう自分たちは恋人同士ではない。これから先、再び結ばれる可能性もない。それなのに今、この瞬間になって、若菜はなぜか雲翔に申し訳ないような気持ちを覚えていた。……やめよう。今頃、雲翔はきっと自分を骨の髄まで憎んでいる。もう愛してなどいないだろうし、自分と烈生の間に何があろうと気にも留めないはずだ。しばらくして、部屋の扉が開いた。若菜は期待に胸を膨らませて顔を上げた。だが入ってきたのは、先ほどの女だった。諦めきれず、その背後に目を向ける。しかし、誰の姿もない。「秦社長は?」「社長はこれから会社へ向かわれますので、お会いする時間がありません」若菜の瞳に失望の色が浮かんだ、その時――「ですが、社長から伝言を預かっています。ここで安心して療養するようにとのことです。他のことはすべて彼が解決なさるそうです」女は続けてそう言った。「本当ですか?」若菜の声は興奮で震えていた。「ここにいてもいいんですか?」「はい」その返事を聞き、若菜はようやく心の底から安堵した。このところの日々は、まるで悪夢そのものだった。だが、その悪夢もようやく終わったのだ。やっぱり、烈生を好きになってよかった。「それから社長よりもう一つ。安全のため、社長の許可なく外出してはいけませんし、外部との連絡は控えるように」女は付け加えた。「分かっています」若菜は慌てて
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