自分はまた、叶うはずのない夢を見ていた。政野は苦笑した。その苦笑を見た秘書は、再びぎょっとして、おそるおそる尋ねる。「どうかなさいましたか?大丈夫ですか?」政野は我に返り、淡々と言った。「何でもない。もう遅いし、君は上がっていい」「承知いたしました」秘書はどうにも政野の様子がおかしい気がしてならなかったが、その理由が分からない。さっきだって、自分は何か失言をした覚えはなかった。本来なら会社を出るつもりだった政野は、結局また自分のオフィスへと戻ってきた。そしてデスクの前に座り、ぼんやりと虚空を見つめる。――今の自分は、本当に正しいことをしているのだろうか。愛していた仕事を捨て、自分が好きでも得意でもないことに毎日追われている。いったい何のために?出世するためか。奈穂に、少しでも自分を見てもらうためか。だが、たとえ頂点まで登り詰めたとしても、彼女が自分に視線を向けてくれるとは限らない。奈穂と正修が婚約した日のことを思い出す。あの日の彼女は、誰の目にも分かるほど幸せそうだった。そのとき、不意にオフィスのドアが開き、政野の思考は遮られた。顔を上げると、入ってきたのは博だった。「まだ帰っていないと聞いてな。様子を見に来た」博は満足げな口調で言う。「最近はずいぶん勤勉になったじゃないか。そうでなくては俺の息子とは言えない」政野は何も答えず、ただ脇に掛けられたカレンダーに視線を向けた。しばらくして、彼は手を伸ばし、人差し指である日付をゆっくりとなぞる。「もし昔の計画どおりだったなら――」政野はぽつりと呟いた。「この日は個展の開催日だったはずなんだ。今ごろオフィスに座っているんじゃなくて、その準備に追われていたはずなのに」その言葉を聞いた途端、博の表情が曇る。「まだそんなくだらない絵のことを考えているのか?今まで何度も個展を開いてきただろう。まだ飽きないのか?」政野は苦笑した。父は決して理解してくれない。自分の情熱も、夢も。昔はそのことが苦しかった。だが今では、もう慣れてしまったのかもしれない。「ただ考えていたんだ。今の生き方に、いったいどんな意味があるのかって……」言い終わる前に、博はデスクの前まで歩み寄り、勢いよくデスクを叩いた。バンッ――「人生にそん
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