結花の手術は10時間以上にも及んだ。 途中予期せぬ事態もあったものの、手術は無事成功。手術室の扉が開き、結花の顔を見た時は本当に嬉しかった。とはいえ、油断は出来ない。暫くは集中治療室での経過観察になり、面会も感染症の懸念から遠慮して欲しいと言われてしまった。 窓越しから見る結花の姿は沢山の管に繋がれて痛々しいが、顔色は随分良いように見える。 息をしている幸せ、生きてくれる喜びを感じながら彼女の回復を祈った。 「高瀬さん」 「あ…」 振り返ると奏が疲れた表情をしながら立っていた。 「結花を助けてくれて本当にありがとうございました」 深々と頭を下げて礼を言うが「当然の事をしたまでです」と遠慮がちに言われた。 そのまま面談室へ通され、手術中に何があったのか、どんな処置をしたのか詳しく教えてもらったが、正直頭にあまり入ってこなかった。 病院の一室とはいえ、隔離された部屋に奏と二人きりなんて……別に邪な気持ちがある訳じゃない。この場でそんなもの持つ方がおかしい。今は先生と患者の関係。奏だって、先生としてしっかり対応してくれている。 頭ではそうは思っていても、心臓の音が聞こえてしまわないか心配になるほど煩い。 「――以上ですが、何かご質問は?」 「大丈夫です……」 質問もなにも、こちらは任せるしかない。 「では、ここからは医者ではなく『藤原奏』として個人の話をしようか」 「え?ここで?」 「ここで話さなきゃ君は逃げそうだからね」 ジッと見つめてくる奏の瞳は全く笑っていない。チラッと扉の方に視線を送るが、鍵はかかっていないように見える。 どうしよう……逃げようと思えば逃げれるけど…… 「悪いけど、も|う
Last Updated : 2025-10-07 Read more