朝倉遥乃は生きていた……率直に嬉しい。ずっと探していたんだ。嬉しいに決まっている。だが、それと同時に彼女は僕の事を酷く憎んでいるという事実も判明した。 彼女が最後に向けた瞳には憎みと恨みが込められていた。(違う……違うんだ!!) 本当は君を愛していたんだ!今更言い訳にもならないだろうが、これだけは分かって欲しかった…… 言葉で言ったところで伝わらないのは分かっている。特に、裏切られたと思っている男の言葉なんて聞く耳も持たないだろう……「どうしろって言うんだ!」 手元にあったコップを手に取ると、壁目掛けて投げつけた。ガシャンッという音共に破片が飛び散る。「──クソ!」 そのままテーブルに突っ伏し、自分の手を眺めた。 奏は病院を出る前に結花の元へ寄っていた。まだ目の覚めていない結花の頭を優しく撫でて一言「頑張れ」と伝えた。 まさか、結花が自分の子供だった事は本当に驚いた。だが、何故だろう…すんなり受け入れられた自分もいる。 それと同時に生まれる時に立ち会えなかった無念や、彼女が大変だった時に傍にいれなかった悔しが怒りとなって込み上げてくる。 彼女がここまでやってこれたのも、神谷煌の存在が大きかった……それは、この間二人の仲を見て確信している。 彼女は彼の事をどう思っているのだろうか……尊敬する兄?頼りになる上司?それとも…… 色んなことがいっぺんに頭を巡り、目眩がする。 そっと床に転がるスマホを手に取る。自然と柚の名前に手が動く。 声が聞きたい。少しでもいい……そう思うが、拒絶されるのが怖くて最後のボタンが押せない。「──はっ」 自分がこんなに臆病で弱い人間だと知らなかった。と自嘲しながら天を仰いだ。 ***「おはよう」 煌は会社に出勤してきた柚に声をかけた。「おはよう」 いつもの様に笑顔で
 Last Updated : 2025-10-09
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