その日の夜、奏は自室のベッドに寝転びながら柚の事を思い浮かべていた。  子供《結花》に向ける暖かくて柔らかな笑顔は、何処か懐かしく胸が熱くなるのを感じていた。  (この気持ちは…)  ドクンッと胸が高鳴る。  思い返せば、遥乃と柚には共通点がありすぎる。  まず、自分がプレゼントしたネックレスと同じものを柚が持っていた点。柚は『亡くなった友人』と口にしていたが、その友人を示しているのが自分だとしたら……  遥乃は困った時や行き詰まった時、手を首元に持っていく癖がある。言われなければ気付かないものだが、ずっと遥乃を見てきた奏になら分かる。  そして、その癖は結花の母である柚にもあった……  「彼女の事が気になるはずだ……」  バラけていたピースがハマったような感覚だった。  ***  柚は湯船に浸かりながら、昼間あった結花の暴走を思い出していた。  「ママのタイプ」  確かにその通りなんだけど……  顔を湯船に埋めながら心の中で呟いた。  昔も今も格好いいのは変わりない。だけど、明らかに変わった一面もある。  昔の彼は、どちらかと言えば冷淡で怖いと言う印象だった。そこも含めて好きに変わりなかったが、時折見せる冷たい視線には、慣れることが出来なかった。  そんなに彼が今では小児科の先生となり、暖かな瞳で子供を見つめ、柔らかな笑みで子供あやしている。  心配する親には真摯に対応し、納得するまで説明を続けてくれる、優しくて頼れる存在。
 Last Updated : 2025-09-25
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